Dream | ナノ

最強の小動物





「てやぁぁぁぁあ!」



道場から響く高めのしかし凛とした声

その後に続くのは大きな“どすっ”と言う音

道場の中心に立っているのは小学生と見間違うほど小柄な少女

その少女の足元には少女の身長より二倍ほどもある大男が倒れている

その足元に倒れた大男がすくっと立ち上がり言う



「有り難う御座いました。師範代。」


大男は少女に頭を下げ道場の端までいって正座で座った




すると少女の後ろから声がかかる


「マコト、流しがうまくなっているな。今日も調子が出ているようでなにより。」


少女の後ろに居た初老の男から発せられた物だ

少女はかしこまった様に頭を下げ


「いえ、とんでもありません。踏み足があまく・・・・」

「お前は自分に少し厳しすぎるんじゃないか?あれだけの大男を投げ飛ばしたのだ、多少そうなっても仕方あるまい。」

「いえ、これでは合気道二段を取ったというのに皆に顔向けできません。」



そう、この少女高坂マコトは史上最年少十六歳で合気道二段を獲得した少女で小柄な身体なのにもかかわらず、凄腕の格闘家なのである

そんな少女は今までやはりというかなんと言うか恋というものの経験が無かったりする

しかし、マコトにも昨日出会いがあったのである







「あれ?迷っちゃったかな・・・?」

「お嬢ちゃん。こんなとこうろついてたら、危ないでしょー?」


町に行ったときに近道をしようとして迷ってしまったマコトが間違えて裏道に入ってしまいうろうろとしていると後ろから声がした

なんとも怪しげな風貌の二十台半ばの男


「おにーさんが、つれてってあげようか。」


その男がマコトに手を伸ばした

マコトはその男の手首をつかんで投げ飛ばそうと手を伸ばした瞬間横から伸びてきた手に阻まれ手首をつかまれ引っ張られる

そして抱きしめられたかと思うと上から降ってくる



「待たせて悪かった。こんなとこで待ってるなんて知らなかったからよ。」

「え・・・・?」



自分を抱きしめてるのはかなり大柄なオレンジ色と茶色が混ざったような色の髪の人。

なんだかライオンのようだ。


「で、連れに何かようか?おにーさん?」


彼は怪しげな男を睨み付け低い声で威嚇するように言う

なんだか、本当にライオンのようで見惚れてしまう



「いや、なんでもねぇーよ。」


怪しい男は“ちっ”と舌打ちをして踵をかえし去っていく

それを確認すると彼は私に目を合わせてこういった



「もう、あんなのについてっちゃだめだぞ嬢ちゃん。」

「いや、ついていこうとしてないですよ?」


彼は不思議そうに


「あいつに向かって手ェ伸ばしてただろ。」

「あぁ、あれは投げ飛ばそうと。」




心底驚いたように彼は目を見開くと次の瞬間大きな声で笑い出す

笑いすぎて目じりに溜まった涙を指で拭うと









それを言うと彼はまた笑い出し一通り笑った後にボソッと言った
『こりゃ、かなわねぇな。俺まで夢中にさせやがる。』という言葉はマコトには聞こえなかった