強いお人は好きですか?
バシッ バシッ
道場に竹刀を打ち合う音が響く。
バシッ バシッ スパァァァンッ
永遠に続くかと思われはじめたその音は一本の竹刀が弾かれた事によって終わりを迎えた。
竹刀を弾かれた方はまだ肩で息をしているにもかかわらず、弾いた側は息すら乱さず立っていた。
隊士達は、息をのんだ。否、ここにいるほとんどの人間が息をのんだ。
その勝者が浮かべた太陽のような笑顔に。
「近藤さぁぁん!勝ちましたよ!!」
「あぁ。」
「これで、隊士になってもいいですか?」
「あぁ。」
近藤は、驚きすぎて「あぁ。」としか返事ができなかった。
近藤だけではなく、隊士達全員が土方が負けるなんて思っていなかった。
土方は真撰組鬼の副長と言われるほど強い。いつも鍛えている真撰組隊士でも、近藤以外は敵わないのだ。
そんな男に16歳の美少女が勝った。しかも、いとも簡単に汗ひとつ掻かないで。
もう、誰もマコトの女隊士入りを反対するものはいなくなった。
そして、近藤は「勝ちましたよ!近藤さん!!」と言われたときから“ドクン ドクン”と熱く脈打っている心臓に喝をいれていた。
「(近藤勲、お前が好きなのはお妙さんじゃないのか!!何ドクドクいってるんだ!!
しかも、マコトちゃんは隊士になれたのが嬉しくて笑ったんだ!!お前のためじゃないんだぞ勲!!」
そしてそれと同じようにマコトの心臓もドクン、ドクンと脈打っていて
「(やったー!!これで近藤さんの傍にいられる!!)」
そんな嬉しい気持ちでいっぱいだった。
他の隊士達もマコトの強さに心を奪われ顔を赤くそめていた。次の日にはマコトファンクラブができ、それに殆どの隊士が入っているのを本人はしらない。
そして、そんなことが繰り広げられている道場の端の方で土方が本気で落ち込んでいるのを見たものはいなかった。