シミュレーション
世界が夕日に染まる。
心地いいオレンジ色は温かさと共に後ろを付いてくる闇の色を顕著にする。
温かい気持ちと寂しさの対照的な感情。
それを背に私は帰路へとついていた。
途中、甘栗甘で買った団子を片手に提げながらゆったりとした速度で進めば家はすぐそこだった。
独り暮らしだからと特に何も考えずにドアを開く。
ガチャ、音をたてて開いたドア。
漏れる光に違和感を覚えた。
どうして気配に気がつかなかったのか、そんなことは考えもせず、腰の忍具袋からクナイを一本だけ取り出して構える。
―刺客、にしては電気を付けるなんてお粗末。
―スパイも同様だ。
―客人にしては気配を完璧に消しすぎてる。
―第一、客人なんかここ何年も来ていないここに何も言わず来るなんて可能性は殆どない。
―......じゃ、誰だ?
―根、か?
―根の伝達だったらあり得るかも知れない。
そこまで考えてもう一度クナイを強く握りしめた。
根なら私は更に警戒すべきだ。
刺客よりも厳重に。
射殺しても構わないくらいには考えなければ生きてはいけない。
それほど私の血は罪深い。
血継限界の一族の生き残りであり、幼少より教え込まれたその家訓は誰よりも私自身がわかっていた。
ドアを勢いよく開ける。
殺される前に利用される前に、相手を殺せ。
罪深き血を他人の血で染め上げろ。
クナイを首筋へと突き立てた。
いや、突き立てたはずだった。
一瞬のうちに後ろ手に拘束された私は床にうつ伏せの状態で倒されていた。
「...血を恨むしかないのか私はっ!」
はぁ、後ろから聞こえてきたため息は私を現実へと引きずり戻すスイッチだ。
「...で、今日は何の設定だ?」
「今日は呪われた血継限界の一族の生き残り!根に狙われる少女の運命とは!?」
我ながら傑作だわぁ…とうっとりとした顔をすれば、頭をぱこんと叩かれた。
もう一度ため息を吐いたアスマ先生に失礼な奴だと口をとがらせる。
「毎回家に来るたび付き合わされるこっちの身にも成ってみろよ」
「なにさなにさ!アスマ先生だって毎回ノリノリで私を負かすクセに!」
「お前なぁ、クナイ片手に襲ってくる奴ほっとけねーだろが!マコト相手に素手で戦ってるだけ有り難く思え、バカ!」
アスマ先生が叩いた所を手で撫で付けながら文句を言えばすぐに答えが返ってくる。
実のところ、これは私と彼のコミュニケーションみたいなもので、私にとってはごっこ遊びと大差ないものなのだ。
なにかと理由を付けシミュレーションと言う名の遊びをする。
まだ下忍である私に上忍であり上忍師であるアスマ先生は倒せない。
それがわかっているからこそごっこ遊びが成立するのである。
構ってくれる大人が周りに少なかった私にとって彼が一番の理解者であり、友人であり、目標だ。
「いつか負かすからいいもん」
「俺がじいさんに成ってなきゃいいけどな?」
「そんなことになったら私いつまでも上忍になれないじゃん!」
「ひいては結婚も...ってか?」
「アスマ先生ひどっ!いいもん、売れ残ったらアスマ先生に貰ってもらうから!」
笑い交じりに言ったアスマ先生にぶすくれながら言う私に彼はまた笑う。
私は既に涙目に成りつつある目をこする。
なんだよー、今日のアスマ先生意地悪じゃんかー!
機嫌がいいとか言ってたくせに!カカシ先生のバカ!
と、完全に八つ当たり気味な事を考えつつ口を尖らせれば上から大きな手が降ってきた。
「はいはい。分かったからそうぶすくれんなよ」
「...!?ほんとに貰ってくれるの!?」
「おー、マコトが中忍試験受かったらな」
だから次の試験頑張れよ、そう言って私の頭をアスマ先生がくしゃくしゃと撫でた。
温かい大きな手に嬉しくなった。
でも言ってやるのもちょっとだけ悔しいから言ってやらないけど。
「...アスマ先生ロリコン?」
「マコト...、もう一発いっとくか?」
「っ!遠慮しときます!」
私が半年後中忍試験に受かった事は言うまでもない。
そして先生のことを先生と呼ばなくなったことも。
追伸.これからのごっこ遊びはままごとに成りそうです。
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哀歌様リクエストありがとうごさいました!
お待たせいたしましたー! (;´∀`)
アスマ先生甘夢。
私のアスマ先生のイメージが優しい熊さん系(笑)なのでこんな感じになりました!
前半と後半で全然雰囲気違く成りましたがそこはシリアルと言うことでお願いします(笑)
ちなみにヒロインの設定的にはナルト達の3つ上で、中忍試験は原作の一年前がイメージ。
シミュレーションと言う名の妄想が趣味。
変人忍一家に生まれたサラブレッド。
みたいな感じです。
リクエストありがとうごさいました。
これからもよろしくお願いします 。+.゚(・ω・。从)。+.゚