Dream | ナノ

裏返し







「師匠・・・なんてっ!師匠なんて大嫌いです!」


つくづく自分に呆れた

世界がひっくり返っても決して思うことなど出来ない言葉が口から飛び出し

敬愛する師の驚く顔を見て後悔する

しかし、言ってしまった言葉は取り消せない

私は涙でぐしゃぐしゃになった顔を師匠に見せたくなくて走り出した








−−−−−−−−−





師匠と出会ったのは6年前

私の年齢が10にも届いていないアカデミーに入る前

近所に住んでいて仲の良いお兄さんだったカカシさんに紹介された


「マコト、このお方は三忍の一人で自来也様だ。俺の先生の先生だよ。」


大きな体をした白髪のおじさん

それが私の師匠への第一印象だった

偉い人だと子供ながらに思ってそのおじさんにペコリと頭を下げたのを覚えている


カカシさんの先生は四代目火影様なんだと教えてくれたことがある

私が生まれた次の年にお亡くなりになったんだそうだが、それはもう凄い忍だったんだそうだ(カカシさんがイキイキと話して聞かせてくれた)

その四代目火影の先生なのだから、強い方なのだとぼんやりと思いながらぼんやりと見つめる私の顔はさぞ間抜け面だったとおもう



−−−−−−−



私は強くなりたかった

忍として、人間として強くなりたかった

あの大きな背中についていって守れるくらい強く

アカデミーのくの一では成績は良い方だったし、術の印も沢山覚えるのも好きな少し変わった子だった

色恋に目が無い他のくの一と違って強くなる事だけに固執して

ただただ勉強する

そんな青春もへったくれもないアカデミー生活


いやたぶん、色恋に興味がないわけではなかった

一目会った瞬間に心奪われていたのだ

あの大きな背中に


それの証拠に私が初対面で師匠に言った言葉は「弟子にしてほしい」だった

隣にいたカカシさんは驚いて

師匠は師匠で「いい女になったら弟子にでも嫁にでも貰ってやる」って言ってたっけ



とりあえず、いい女の基準が分からなかったその頃の私はあまり良くない頭をフル回転させて考えた結果強くなることを最低基準として位置づけ

口を吐いて出る言葉はかわいくないものとなって




下忍になった日、私は師匠の元へと行って見事弟子になることに成功した(師匠は私のいい女の基準に苦笑していたが)


私が弟子になって早二年

師匠は私を弟子にするといってからすぐに取材旅行に出てしまったからもう二年も会っていないことになる

去年私は他の忍と比べるとかなり早く中忍試験に受かり、それなりに強くなったと思う

そんな時師匠が取材旅行から帰って来たと聞いて一目散にいつもの温泉街まで走ったのがいけなかった






そこには素っ裸のそれはもうナイスなバディーのお姉さんと鼻の下を伸ばした師匠がいたのだから



浮気ではない

私と師匠は恋人と言う関係ではないし、私が一方的に慕っているだけだからだ

だけど涙が止まらなかった


私の足は迷うことなく一つの場所へと向かっていた






−−−−−−−−−−




「エロ仙人、今さっきの綺麗なねーちゃん誰だってばよ!」

「んー?それがなぁ、思いだせん・・・。わしがあんな綺麗な女忘れるとは思えんが」

「でも完全にエロ仙人見て泣いてたってばよ!心あたりはなーのかよ?」

「今わしを出迎えてくれる木の葉の忍びなんて弟子一人ぐらいだってーの。しかもあいつは美人っつーよりまだまだおこちゃま・・・・」



エロ仙人の言葉が止まった

考え込んでいたかと思うと「すまん、修行は後だ!」と言ってねーちゃんの後を追っていった




−−−−−−−−





「うっ、・・・・くぅ・・あぅ・・・・・っ」


年齢に似つかわしくない嗚咽を漏らしながら泣く

泣くときはいつも誰にも見られないように火影岩の崖まで行って泣くのが子供の頃からの習慣

誰にも邪魔されずすっきりするまでここで泣くのだ


「マコトなくな。」


幻聴だろうか、いつもは誰も来ないはずの場所に愛しい人の声が聞こえた


「無視するもんじゃねーのォ?」


わしわしと髪が撫でられたのに驚いて私は声のする方に顔を向ける


「師匠・・・。」

「今さっきのは誤解だ。なぁーんも厭らしいことはしてねぇ――」

「怒って・・・ませんか?嫌いになってませんか?」

「なんでわしが怒る?」

「だって私師匠のこと嫌いって・・・」


私の髪をまたガシガシと乱暴に撫でて




「お前に初めて会ったときからお前を嫁に貰う気満々だからな、わしはそんなんで嫌いになれるほど人間できてねーっての。」


「・・・え?」


「返事は聞かん。お前の言葉なんざあてにならんからのぅ。いつも思ってることと違うこといいおって。」


「っ!確かに素直じゃっ・・・・んぅ・・ふぁ・・・ふんぅ・・」



悪態を吐こうとした唇を師匠のソレが塞いで

くちゅくちゅという厭らしい水音だけが聞こえる

朦朧となる意識のなかで師匠が喉のおくで笑うのが聞こえた







ヤマアラシのジレンマ

素直に言葉できない唇なら塞いでしまえばいい










「にしてもいい体つきになったのぉ・・・。」

「・・・っ!やっぱり師匠なんて嫌いです!近づかないで下さい!」

「よし、とりあえず一度家にもどって成長具合でも見せてもらうとしようかの!」

「話をきけー!!!!!」














----------

最近、某生主様のニコ生を拝見して
それに滾って勢いで書きました(汗
自来也夢本当に久しぶり・・・・
自来也大好きだけど難しいんだよなぁ・・・
東条連載が一段落したら、他の人の短編もまた増やしていきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!