Dream | ナノ

ライン、2





あれからどのくらいの時間が過ぎたのか分からない

日が昇っては沈んでいく

最近私の目に映る色はシロさんの寝袋の赤だけだ


私の目は自分の肌色にも自分の長い日本人にしては薄い茶色の髪にも反応を示さなくなって

自分をみても虚しくなるだけで落ち着くことは出来なくなっていた


この部屋に来て安心できるような時間が訪れるのは決まって夜

昼間外に行っていたシロさんが家に帰ってくる


ここに私を閉じ込めたのは彼なのに私は彼の赤に安堵するのだ





−−−−−−



今日もいつもと変わらずシロさんがやってきて私の髪をなでる

「いい子にしてたかい?」その言葉が彼の口から零れるのをじっと待つ


彼は私をここに閉じ込めたけれど何をするわけではない

毎日決まった時間にやってきて

にこりと微笑んで

私の隣に座り

私の頭を撫でる

そして決まって「いい子にしてたかい、マコト?」と聞くのだ



しかし、彼の口から零れた言葉は予想していた言葉とは違っていた



「マコト、外に出てみるかい?」



彼の口から発せられた言葉にわたしは目を見開く

彼がここに私を閉じ込めたのに出てみないかと言うのはどういうことだろう?

私に、飽きたのだろうか・・・・


不安になる

ここに閉じ込められてから

いや、閉じ込められる前からかもしれない

私はシロさんがいなければ寂しくて何も出来なかった



彼の声を聞くと

彼の赤をみると

彼の引いた白線をみると

彼が私の頭を撫でると


ほっとした

それがなくなったら、きっと私は壊れてしまう



そう考えたら私は不安になって

シロさんの腕をぎゅっとひいた

シロさんは私が不安げな顔をしていたからか頭をもう一度撫でて言う



「でも、約束があるんだ。」




いつでも俺の傍にいることと


外では俺の白線の上だけを歩くこと




「それが外にでる条件だよ。」



にこりと笑ったシロさんに私はにこりと笑い返す

シロさんの白線の上を歩くと思うと少し嬉しかった

シロさんと一緒にいられると考えるともっと嬉しくなった

これは他の人から見れば歪んだ愛かもしれないけれど

染まってしまえばなんて事は無い

心地の良い愛情だ






「俺の白線の上を一緒に歩いてくれないか」






彼からのプロポーズの言葉は少しかわっていた