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小さい頃から唯一の家族である父さんにくどいぐらいに僕には婚約者がいると聞かされていた。
だが今の時代に婚約結婚なんて笑える話だと思うし、そもそも僕のこれからの人生を供に歩む事になる伴侶は自分自身で選びたい。

簡単に言ってしまえば僕は小さな頃からこの婚約を破棄するつもりだったし、現在進行形で思っていた。

「綺麗なオッドアイだね。宝石みたい。」

そういって僕の瞳から目を逸らさずに微笑む君を見るまでは。

目の前には長いハシバミ色の髪の毛を高い位置にまとめて目を伏せている彼女。女性らしい長い睫毛が開かれた時、見上げてきた白藤色の瞳にどうしようもないぐらいに五月蝿く動く心臓。

僕は今、人生の分岐点にいるといっても過言ではない、と思う。

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