02 どういう神経してるんだか
辰也とは親の都合でフランスからアメリカのロサンゼルスへ引っ越した時に出会った。

正直言って辰也への第一印象は最悪だった。
だって私が目を見て自己紹介しようとするのに、辰也は絶対に目を合わせてくれないし、たまたま一瞬目があったと思ったらすぐ逸らされるし、声小さくて何言ってるかわかんないしで、あまり私は辰也の事が好きじゃなかった。

だが家が隣同士だったからなのか、嫌でも毎日のように顔をあわすはめに。

小さい私は当時辰也の事が本当に嫌いだったらしく、会わないように遊ぶ時間をずらしていたり、たまたま会って挨拶をされても無視したり、と本当に嫌悪感丸出しで近寄りがたいオーラを漂わせていたにも関わらず、どういう神経してるんだかいつの間にか辰也の方から毎日私に遊びの誘いを言いに来る様になっていて。

気づいたら同じ学校に通って、髪の色も顔のつくりもまったく違うのに兄妹だと間違われるぐらいに仲良くなっていた。

別にその頃、辰也の事はなんていうか、こう、頼られたがりのお兄ちゃん気質な子としか認識していなかった。だって外見はぱっと見根暗だし、根暗っぽい外見してるくせに負けず嫌いで結構泣き虫だったし。

だけどある日、辰也がバスケをしている姿を一目見た瞬間、いつもの辰也からは想像できないぐらいにかっこよくて、私の中での辰也への想いが一揆に溢れた。これが私の初恋だ。

私の真っ白な世界に彩りを与えてくれたのが辰也だった。なんて臭い例えだとは思うが、これ以上のうまい表現の仕方がわからない。
だけど、初恋は実らない。という日本で有名なジンクスのとおり、私の初めての淡くて甘酸っぱい(死語だと自負している)恋心はどろどろに溶けたチョコミントアイスクリームと共に溝に流れていった。

辰也に告白して振られたわけではない。
いや、振られたのは強ち間違えではない。

「名前、僕ね、好きな人が居るんだ。」

アイスを二人で食べてる時にそう言ってきた辰也の赤い顔を私は生涯忘れる事は絶対にできないのだと思う。

辰也に好きな人が居ると告げられた日、私ははじめて大好きなチョコミントアイスを残し、帰り道の溝に捨てて泣きながら家に帰った。

今思えば最後まで大好きなチョコミントアイスを何故食べないで溝に捨てたのか理解できない。勿体無い。
勿体無いお化けが出てくれたらどうしてくれるんだ、と冗談はここまでにしておいて。

初めての恋心がずたぼろになった私だが、そう簡単に辰也への想いが消せれなくてずるずると結構な間引きずっていた。

ねちねちと続く辰也への重い恋心は、大我と私と辰也の三人で遊ぶようになってからというもの綺麗さっぱり程ではないがある程度無くなり、何度大我に感謝したことか。

この先もずっと変わらず三人一緒の中学に行って、高校、大学とずっとずっと幼馴染を続けていくつもりだったし、そう思っていた。
だけど私は中学にあがると同時にお父さんの仕事の都合でまたフランスに帰るはめに。

フランスに帰ると辰也と大我に泣きながら伝え帰国して早5年。
そして今日、私はきまぐれな親の都合で日本に行きます。

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