01 いいわけをしたい
いきなりだが俺、氷室辰也17歳には小さい頃からずっと片思いの女の子がいる。

その女の子は名前といって、名前とは親の転勤でアメリカに引っ越した時に出会った。
今思えば一目見たときから多分、俺は名前の事が好きだったんだと思う。

ミルクティーベージュカラーの肩までのふわふわな髪の毛。
大きくて少したれ目気味な青い宝石のような瞳。
白い肌に鼻筋の通った鼻。桃色の唇。
フランスと日本のハーフだからなのかはわからないが、まるで本物の人形のようで凄く可愛かった。

名前をはじめて見た時、ふいに目が合ってしまいすぐにそらした覚えがある。それはあの時の俺が女の子への面識が少なかったから、といいわけをしたい。
本当はただ恥ずかしかったんだ。名前があまりにも可愛過ぎて、こうなんというか小さい俺はまともに直視できなかったんだ。

だけどふわふわで本物の天使みたいな外見とは正反対の性格だったのをはっきりと覚えている。

宜しくというのも兼ねて恥ずかしさを隠しながら握手を求めたら、心底嫌そうな顔で一瞬、ほんとに一瞬触れるだけの握手をしてきた名前にどのぐらい俺は傷ついたことか。
あそこまで自分の感情に素直に従って嫌悪感丸出しな握手をしてきたのは俺の経験上名前だけだ。

はじめはそこまで名前とは仲良くはなかった。といっても俺は名前の事がその頃から女の子として好きで、ほら、好きな人には自分のことも好きになってほしいだろ?
だから小さいながら俺は必死に名前に色々とアプローチしていた。

最初は遊びに誘ってもよく断られていたが、生憎俺は何度か断られただけではいそうですかとすぐに諦められる性格ではない。

のでめげずにひたすら名前に構っていたら、嫌々ながらだったが名前は俺と遊ぶようになって、そうなったらこっちのもので、気づいたらいつも一緒にいるぐらい仲が良くなった。

名前と仲良くなるまでに俺がどれだけ苦労したか本人は絶対に知らないんだろう。

それから名前と俺で過ごしていた二人の時間にタイガが入ってきて、いつの間にか俺たちはいつも三人でいるようになった。

毎日飽きもせずにバスケをして三人で泥だらけになって帰ったり、勉強をお互いに教えあったり、一緒にいたずらをして怒られたり、賭けバスケ場に行ってアレックスに弟子入りを頼んだり。
ずっとこのまま三人一緒だと思っていた。

だが現実はそうはいかなくて、名前は中学に上がると同時にフランスへ帰国。

あれからもう5年。
名前は今どこで何をしているのだろうか。
俺とタイガが今、日本に居るって知っているのだろうか。

次タイガと俺が勝負して俺が負けたら兄弟を解消する約束をした何て名前が知ったらきっと、いや、絶対に俺とタイガにビンタをするだろう。

まだチョコミントアイスクリームが好物なのだろうか。

名前に会いたい。
今日もそんなことばかりを思って授業を受ける高校2年の9月上旬。

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