honeyed | ナノ





カランと鳴った。
カットアイスの入ったレモン水を二つ持ってルーシィがテーブルに座った。


「はい、飲むでしょ?」


差し出された片方を受け取って、軽く礼を言うとルーシィは微笑んだ。


honeyed




「ミラさんに教えて貰ったんだけどね、上手くできたか不安なのよね」


「実験かよ?!てか、作ったのか!」


日頃さんざんからかってきた仕返しに変なもの入れてるかも。ナツは慎重にレモン水の匂いを確かめると、


「あたしも一緒に飲むんだから良いじゃない!」


キュッと眉をつり上げたルーシィが自分のレモン水を一口飲んだ。

「はは、悪ぃ悪ぃ…」

「ん、いいわよ。でもちょっと入れすぎたかも?」

「何を?」

「蜂蜜」


言われて、もう一度匂いを探る。確かに花のような甘い香りがレモンの爽やかな香りに混ざっていた。
ナツも一口、ルーシィお手製レモン水を飲んでみた。
少し甘いが、甘すぎることはなかった。


「俺は好きだな」

「そう?ならいいけど…なんかミラさんのと違う味なのよね」

「甘くて美味いじゃねぇか」

「そ、そうよね!」


レモンの酸っぱさがあまりなく、まろやかな甘いレモン水をもう一度口に含んだ。
すっきりした柑橘系の香りが口の中に広がって、喉が優しく潤っていく。


「これまだあるのか?」


半分以下に減ったグラスを指してルーシィに聞いてみると、


「ちょっとしか作ってないから、もうないわよ」


ハッピーの分くらいなら残してあるけど、とルーシィは言ってナツのグラスに残った分量を見た。


「そっか…また作れよ」

「いいわよ。てか、あんた飲むの早いわね」

「うまいからな」

「……ふ…ふぅん?そう」


視線をさまよわせたルーシィを変なモノを見るような目で見て、ルーシィが変なのはいつもだしなと納得する。
グラスに残ったのを氷ごと流し込み、ナツはそのまま氷をゴリゴリ噛み砕いた。
空になった自分のグラスをテーブルの端におき、ルーシィの分のグラスを取る。


「な、に?ちょっと、あたしの…!」


ちっとも減ってないそのグラスを取り上げ、


「ルーシィ飲まないんだろ?くれよ」


口をつけようとしたら凄い勢いで奪い返された。
衝撃で少し零れ、ルーシィの手にかかったが彼女は気にもせず真っ赤になってさけんだ。



「ぜ、ぜ、ぜ、ぜっったい!だめ!!」



滅竜魔導師にはうるさいくらいの声量に耳を塞いでナツは舌打ちした。


「んだよ、ケチ」


「そ、そういう問題じゃ…あんたデリカシーって知らないでしょ!?」


「はぁ?知らねーよ!」


「何逆ギレしてんのよ!てかあげるワケ無いでしょ?」


「俺とルーシィの仲だろうが!」


「どんな仲よ!」


「ルーシィのモノは俺のだって事だろ」


「どこのジャイアンよ!?」


「あーもぅいい!ルーシィ手ぇ出せ」


「え?何で?」


戸惑うルーシィの手を強引に掴み、顔を寄せる。
ふわりとレモン水と、蜂蜜によく似たルーシィの香りが鼻孔をくすぐる。
さっき零れたレモン水をペロリと舐めとった。
掴んだルーシィの手が、熱でもあるのかと思うほど火照った。


「仕方ないからこれで我慢すんよ」

固まった熱い手を解放すると、ルーシィは固まったように動かなかった。


「何、変な顔してんだよ」


「あ……あんたが、悪いんでしょ…!?」


唇を戦慄かせて真っ赤になったルーシィに睨まれたが、怖くも何ともなかった。


「減ってねぇんだからいいだろ?」

「そ、そぉいう事じゃないの!」


肩で息をするルーシィの顔が面白いだけだった。


「変な奴だな…まぁいいや、ごちそーさん」


端においていた自分のグラスを持ち上げ、真っ赤になって何か唸っているルーシィの前に置く。


「俺ハッピー探してくるわ…ハッピーの分あんだろ?」

「………うん」


俯いて耳しか見えないが、真っ赤なままのルーシィにそう言うと、日差しのきつい外に飛び出した。



「……あめぇ…」



暑さに強いのに、頬に熱があるのを暑さのせいにして、舌に残るルーシィの肌の感触に締め付けられそうな胸を押さえた。



終わり





山査子の氷野安芸様から素敵な相互記念作品を頂きました!
めちゃくちゃ意識するルーシィに対して、平気そうに振舞っていたナツですが、最後の一文にやられました。俯いたルーシィには判らなかったけど、ナツも頬を染めてドキドキしてたんですね!ジャイアンナツが非常にツボでした。
素敵な作品ありがとうございました!

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