ルーシィの様子がおかしいと、薄々気付いてはいた。けれど、別に会話をしない訳ではないし、感じる違和感は、僅かなものでしかない。
だから、この間のクエストでの破壊行動で報酬が減った事に腹を立てている、ぐらいにしか思っていなかった。いや、ルーシィを守る為だったんだ、そんな事ぐらいでいつまでも臍を曲げるな、とすら思っていた。
それでも何も言ってこないルーシィに段々とイライラして。彼女が自分と同じように意地になっていると思い、負けるもんか、と強がって部屋に遊びにも行かず。
ルーシィの事だから、その内金が無いから仕事に行こう、と泣き付いてくると高をくくっていた。
ギルドで暴れ、リサーナにからかわれたり、とそれなりに楽しんではいた。けれど、頭の片隅にはいつでもルーシィの存在が居座ってて、モヤモヤする。
リサーナだって戻って来たし、ルーシィが妖精の尻尾に来る前と変わらないはずなのに。
――ルーシィが足りない。
2人で行く仕事の依頼書だって常備している。いつ言われても大丈夫なように、密かに選んだものだ。
けれど些細な違和感が、ナツの行動を抑えていた。
いつもなら有無を言わさず連れて行く。そう出来ない自分と、させない雰囲気を醸し出すルーシィに、心がジリジリと燻っていたんだ。
だから、余計に――
ルーシィの口から絶対に出ないはずの言葉に、裏切られたとすら感じ、自分の存在を否定された気がした。
ルーシィから話があると言って呼び出されて、浮かれていた自分がバカみたいだ。
あんな言葉が聞きたかったんじゃねえ。
第一、守ってばかりじゃなく、逆に守られた事も一度や二度ではないのに。
強くなって1人でクエストに行ければ、それでいいのかおまえは。オレは嫌だ。いくら強くなってもルーシィが傍に居ないなんて考えたくもない。
ヤバい時でも、何でもない時でも。いつでもバカみたいに笑って。そんなルーシィと一緒に居る時間をどれだけ大事に思っていたか、照れくさくて伝えた事はないけど。
――同じだと思ってたのに。
「納得出来ねえ、だろが……」
ナツはギリっと歯を噛み締め、拳に力を入れてルーシィを求めて走り出した。
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by トム
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