重い瞼
「なおさんっ!失礼するよ!」
「…桂さん?どうしたんですか?」
何時になく慌てている桂さんは、返事を待たずにあたしの部屋の襖を荒々しく開けた。嫌な予感がした。
「…晋作が、倒れた」
嫌な予感は的中した。
…晋作が、倒れた
その言葉が頭をグルグルと回る。言葉を選ぶように、ゆっくりと…でも桂さんは確かにそう言った。晋作さんが、倒れた?
…
…
「晋作さん、入るよ?」
襖の外からなおの声が聞こえて目を開くと見慣れた藩邸の天井が見えた。自分が倒れて布団に寝かされているんだ、と理解した頃にはなおは既に襖を開けていた。
「こら、まだ返事をしてないぞ」
「…あ、ごめんね。起こしちゃった?」
申し訳なさそうな顔をするなおにおいでおいでして起き上がろうとすると慌てて駆け寄って、無理矢理また布団に押し込まれた。
「無理しちゃ駄目、寝てて。…ね?」
「…ん」
「やけに素直だね…」
調子狂っちゃう、と苦笑したなおを今までにないくらい愛しいと思った。
ああ
思った通り、やっぱり綺麗になったな
初めて会った時から思っていた。こいつは綺麗になる。だけど、こんなにも綺麗になるとはな…。
そんななおをもうじき俺は1人にしてしまう。
自分の体の事は自分が一番よく分かってる、もうそんなに長くはない。
…生きたい
…もっと傍にいたい
こいつはきっともっと綺麗になる。目の前で目に涙をいっぱいに溜めてるなおの傍で綺麗になっていく様をもっと見ていたかったが…
「なお」
「ん?」
「…愛してる」
「うん…」
「愛してる…」
「知ってるよ…?」
「だから、泣くな」
もう俺はいかなければならない。堪えきれなくなった涙がなおの頬を濡らす。俺は体を起こしてその涙を拭うように頬に口づける。
こんなに泣きじゃくるなおを置いて…
「こんな事しか出来ない自分が情けない…っ!」
「そんな事、ないよ…」
「俺は今まで転生など信じた事がなかったが…」
しっかりとなおの目を見て言った
「だが、俺はどこに居たってお前を守る。今まで信じた事もなかった転生もお前のためなら信じたいと思う。」
「…晋作さん!」
「願わくば、生まれ変わってもお前の傍に…お前と、なおと一緒にいたい」
「そんなお別れみたいな事言わないでよ!」
「…そうだな」
ふっと笑ってなおを抱きしめる。心臓の音が聞こえる。お前を腕に捕まえている時が一番落ち着く。
「悪い、少し眠りたい」
「…うん」
布団に横になっておやすみと言うとなおは辛そうな顔をしておやすみと返した。
次目が覚めたら、もう一度なおを抱きしめよう。これから朝一番になおを抱きしめてやろう。少しでも一緒にいる時間が長い方が良い。
なおが襖を閉めた音を聞いて俺はひどく重い瞼を閉じこの世に別れを告げた。
2011.01.22
相互リンクお礼で
orangerのなお様に…
晋作さんの切ないの
と言うリクエストで
書かせて頂きましたが
どうでしょうか(;_;)
こんな駄作ですが
受け取って下さい(-.-;)
そしてこれからも
よろしくお願いします!
Hanauta*詩より