2月27日





ドタドタ…


ガチャンドタドタ…



さっきから廊下をいろんな人が忙しそうに行ったり来たりしている。今日は何かある日だったかな、と考えるけど昨日の夜も、今日の朝も特に何も言ってなかったし、そんな雰囲気ではなかった。

なんだろう

不思議に思って襖を開いて顔を覗かせてキョロキョロしていると、向こうから龍馬さんが箱をたくさん抱えて慌ただしくやってきた。



「龍馬さん!」

「おぉ、なお!すまんが急いどるき、後にしてくれんか!」

「あのっ、お手伝…行っちゃった」



お手伝いしましょうか、って言おうとしたあたしの言葉は龍馬さんの足音にかき消されてしまった。そう言えばさっき以蔵と慎ちゃんもバタバタしてたな…。

足手まといになっちゃいけないと思って部屋に戻ろうとした時、武市さんに声を掛けられた。



「なおさん」

「武市さん、今日は何があるんですか?」

「ここは慌ただしい。僕と干菓子屋にでも行かないか?」



武市さんはあたしの方を向いてにこりと微笑みながら頭を撫でた。こうして武市さんと干菓子屋さんに行く事になった。

武市さんが知り合いの人に良い干菓子屋さんを教えてもらったらしく、いつものお店より少し遠いお店に行った。


帰って来る頃には空が赤くなり、夕陽が見えていた。



「ただいま〜」



寺田屋に戻ると辺りは真っ暗。いつもならどこかしら蝋燭がついているのに…不思議に思って武市さんの方を振り向くと武市さんがいなくなっていた。



「武市さん?」



不安に思いながらも目が暗さにだんだん慣れてきて奥へ進んで行く。

いつもみんなが集まる部屋にだけ蝋燭が灯っていた。恐る恐る襖を開くとそこには龍馬さんが真っ白のタキシードを着て立っていた。



「似合う、かの?」



龍馬さんは顔を少し赤くして聞いた。
びっくりしていると後ろから慎ちゃんと以蔵と武市さんが来て、頭に真っ白のベールを着けられた。



「…これは?」

「姉さんの誕生日祝いっス!」

「なお、誕生日まっことおめでとう!」

「これは僕たちからの贈り物だ。西洋の祝言はこうして行うと聞いてね」

「先生に気を遣って頂けたんだ。有り難く思え」

「それにしてもさっきなおに西洋の服が入っちょる箱を運んでる時に出くわした時はドキドキしたぜよ!」



けらけらと笑う龍馬さん。
みんなによるとどうやら今日は2月27日であたしの誕生日らしい…。思わぬサプライズに視界が歪む。

頬を伝う涙を隠すと龍馬さんが正面まで来た。



「せっかくの晴れ姿が台無しじゃき」

「でも、嬉しくて…っ」

「泣くならワシの腕の中じゃ…」



龍馬さんにぎゅっと抱きしめられた。気付けば武市さん達はいなくなっていて、部屋には2人きりだった。龍馬さんの背中に手を回し、鼓動に耳を傾ける。



「この事はなおには内緒にしちょったき、今日はなおと全く話せんで寂しかったぜよ」

「でも龍馬さんのお陰で素敵な誕生日になりましたよ」

「ワシもおまんの喜ぶ顔が見られて幸せじゃ」



龍馬さんは体を離しあたしの顔を持ち上げた。ぎゅっと目を閉じると、こつんとおでこがくっついた。



「生まれて来てくれておおきに。ワシの傍におってくれておおきに。これからもずっとワシの傍におってくれ…」



あたしが頷くと龍馬さんはあたしにそっと口付けた。

ドレスは着れなかったものの、龍馬さんのタキシード…まるで結婚式の誓いの言葉のようだった。今まで生きて来た中で忘れらんない誕生日になった。



「ありがとう、龍馬さん」



2011.03.02
orangerのなお様へ
誕生日プレゼントです…!
誕生日おめでとうございます!
すいません、風邪ひいて
当日にお祝いが
出来ませんで…!(;_;)
しかもへっぽこですみません
お祝いしたい気持ちが
空回りしました(笑)
愛だけは詰まってます…!

Hanauta* 詩





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