「沖田さんっ私が後で食べようと思ってとっておいた…っ」


「お団子ですか?
美味しくいただきましたよ」


平然と答えるとひどいとか馬鹿とか騒ぎながら僕の胸を叩く詩さん。
逆にお礼を言って欲しいくらいですけどね…
…ほら、来た


「総司ーっ!
客に出す羊羹食べやがったな!?」


「土方さん…証拠も無いのにひどいなあ」


いきなり部屋に飛び込んできたのは
言わずも知れた鬼の副長こと土方さん。
ひどいとか言ったけど…僕が食べた事に間違いは無くて、思わず笑みを浮かべた僕に
訝しげな視線をよこす二人。


「二人で買いに行けば良いと思いますよ」


僕がそう言うなり不自然に慌て出す詩さんと
急に静かになる土方さん


「さあいってらっしゃい。
あ、お土産はおかまいなく」


僕がひらひらと手を振ると
土方さんは半ばやけになった様子で詩さんに「行くぞ」と声を掛けて引っ張っていく
詩さんは頬を赤く染めて…初々しいなあ
…もっと素直になれば良いのに…二人共。
実は僕は詩さんからは土方さんの事を相談されているし
土方さんからも詩さんを好きだと言う事を聞き出していた。
二人の間を取り持つのは面白いし、今日は甘味も食べられたし…結構役得だったりする
お互い惚れているのに中々恋仲にならない二人。
今日の外出で上手くいけば良いけどな…
僕はそろそろ稽古をしようかと思い立ちゆっくり道場へと足を向けた




一刻後、二人が帰ってきた
僕は水を飲みに来た所で…ちょうど鉢合わせたのだった。
買いに行くだけにしては帰りが遅いから
一人になった詩さんを空いている部屋に引きずり込んで何があったのか聞いてみる


「ただ買うついでに甘味を食べてきただけですよ」


「…それだけ?」


詩さんは一緒に甘味を食べる事ができただけで満足なのか
気持ちの良い笑顔を浮かべている
そればかりか土方さんと交わした、なんて事ない会話を幸せそうに話してくる
僕は無性にため息をつきたかったけど…そこはぐっと堪えて詩さんに笑顔を向ける


「じゃあ僕は稽古に戻ります
あ、今土方さんの部屋に行けば良いものが見られますよ」


僕がそう言えば詩さんは土方さんの部屋に行くだろう
…先程見た所、土方さんの着物の裾に泥が付いていた。
きっと彼の事だからすぐに着替えるはずだ
詩さんには刺激が強いかな?
…でもこれくらいしないと。
きっと土方さんはそろそろ我慢がきかなくなってきた頃だろう
彼は先日詩さんが純すぎて手が出せないとぼやいていたから。
…最も、手を出す前に段階を踏んで欲しいとは思うけど


僕は去っていく詩さんの背を見ながら
後は二人でどうにかしてくださいよ…今度こそ、と漸く我慢していたため息をついた





…次に二人を見た時、僕はその願いが叶ったと知って喜ぶ事になる
少しして詩さんの悲鳴が聞こえてきた時は
一瞬駄目かと思ったけれど。




わたしは沖田さんの言っていた「良いもの」が気になって
土方さんの部屋に来ていた


「詩です…入りますよ?」


ああ、と了承する返事が返ってきたからわたしは襖に手を掛けてそろりと中を伺う
「…きゃあ!?」


「うるせえな、早く入れ」


そう言って土方さんは固まっているわたしの腕を引いて部屋に入れ、襖を閉めた
土方さん…上半身、はだか…
肩だけを着物から抜いていて帯の所で引っ掛かっていた。
…筋肉質で締まった身体
好きな人の身体を目の当たりにして容赦なく上がる体温


「お前には刺激が強かったか?」


にやりと笑う土方さん。
早く何か着てくださいと頼むけど動く様子はない
駄目…まともに見れないっ


「…おい、俺を見ろ」


「無理です…」


俯いているわたしに土方さんは「何故俺の部屋に来た?」と聞くから
沖田さんに言われた事をそのまま伝える。
すると彼は「余計な気を遣わせやがったなあいつ…」と何やらぶつぶつ呟いていた


「土方さん?」


「…総司はどうやら俺に詩を襲って欲しいらしいぞ」


驚いて言葉が出ない。
先程の沖田さんの発言の意図について思いを巡らしているわたしの腰を
土方さんはにやりと笑って引き寄せて自分の胸に閉じ込めた


「他の男の事考えるたぁ良い度胸じゃねえか」


「…や、わたしは別にっ」


反論しようとしたわたしの唇に
土方さんのそれが甘く噛みつく。
ゆっくり離れていく彼の目が何時もより優しくて思わず背けしまう


「…何故この俺が詩みてえな純な女に惚れたんだか」


悔しそうな顔でわたしの顎を掴み強引に前を向かせる土方さん
土方さんなりの告白なのかな…?
胸がぎゅっと締め付けられた様になって
何だか苦しくて胸を押さえた
もう一度唇を合わせようとする彼を制止すると、重なる寸前の所で動きが止まる
土方さんの熱い息がかかって…ぞくりと身体が疼く


「…どうした?」


「わたしも好きだって…言いたくて…っ」


「は…っそんな事、口を吸えばわかんだよ」


彼はそう言うと腰に回していた手でわたしの背筋をなぞる
びくんと身体をしならせたわたしの首筋に軽く口づける
その反応に満足したのか土方さんはにやりと笑った
…この表情、好き…
彼の甘い雰囲気に飲まれてしまいそうだった
再び近付いてくる土方さんの唇。
土方さん…好き…
わたしはそっと目を瞑った


「土方さーん!
逢引中申し訳ないですが
岡田が見つかったみたいですよ」


突然勢いよく襖を開ける沖田さん
わたしは慌てて離れようとするけど
土方さんはわたしを腕に収めたまま沖田さんと話を交わす


「詩さん、邪魔してすみませんね
でも上手くいったようで安心しました」


申し訳なさそうにそう言って沖田さんは部屋を出ていった
…気を使われる事が恥ずかしい
俯いたわたしの頭を土方さんは優しくかき抱く
あ…また胸がきゅってなった
土方さんをそっと見上げると熱い唇が降ってきた
もっとしてほしいと見つめるけれど名残惜しそうに離れていくぬくもり。


「続きは後で…な」


大人しく待っていろと囁くと
着物を手早く整え、浅葱色の羽織りを掴んで部屋を出ていく土方さん
触れられた所がまだ熱い…
土方さんが帰ってきてからの事を考えるたびに高なる胸。
わたしは火照る自分の身体を抱きしめながら
気を紛らわせようと、協力してくれた沖田さんへのお礼を何にするか考え始めるのだった。






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相互記念で「fake fur」のもちさんより頂きました!…さすがは筋肉フェチのもちさん!この類の話は特に素晴らしいです…!実はまだヒジー√をしてないんですが今から楽しみです…!ワクワキ 詩がわがままにも「沖田さんを出して下さい!」と言ったところ…!大活躍ですな(*^^*)もうわがままも聞いて下さってありがとうございます!改めてこれからもよろしくお願いします!

もちさんのサイト
fake fur


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