小娘が来てからというもの、藩邸が騒がしくなった。
今朝もやかましい音をたてて、私の部屋に足音が近づいてきた。

「大久保さん!!!!!!!」

馬鹿じゃないかと思う。
馬鹿しかこんなにうるさくできない。

「…騒がしい。馬鹿か。何だ。」

バカって何ですか!?とひとしきり騒いだ後、手のひらの小物に気が付く。

「……」

「そうですよ!これ、大久保さんがくれたんですよね?」

「小娘は、寝相が悪いから潰してしまうんではないかと思ったが。」

大丈夫なようだ。

「何ですかそれ…サンタさんじゃないですか…」

さんた?

「それより早く、着けてみろ。」


りんぐ、というらしい。たまたま手に入った小さな鉄の塊。愛する人に贈り、左手の薬指に着けろと言われた。


「………。似合いますか?」

「…右手?」

いやもちろん詩にしか似合わない思って買ってきたのだから、似合うに決まっている。しかし、こういった類のものは、てっきり未来でも同じ習慣だと思っていた。

「え…ひ、左手の薬指に、いいんですか!?」いいんですか、と言われても。

「右手の薬指は恋人。左手の薬指は婚約者。…あれ、この時代は違うのかな…?」

あぁ。

「じゃあ、右手か…。」

手を取り、指輪…
もとい、指に唇をよせる。

「…今は右手。左手は、こんな安物じゃ済まさないからな。」


真っ赤な詩のおかげで一瞬静かになった藩邸の主人は、実に滑らかな動作で立ち上がる。


「それって…」

静かな朝は素晴らしいと余韻に浸る暇もなく。

「喜んでいいんですか!!!!!!!!」

主人の眉間の皺は今日もはっきりと見てとれた。

「…お前の気持ち次第だ。馬鹿にはやらんがな。」

だからバカって何なんですかという疑問を背中に投げ付けられ、うるさいうるさいと1人廊下に出る。


「まぁ右手でも。」

寄ってくる男に、私のものだと示せるからいいかと笑いながら、次のりんぐの為に今日も仕事に向かうのであった。




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AM3:40さっちょん様より相互記念で頂きました!(^p^)ぴゃあああ!w最近大久保さんが大好きなのでお願いしちゃいました(笑)大久保さんになら右手も左手もあげちゃうよ!大久保さんになら馬鹿と言われても嬉しいよ!(笑)もう本当にありがとうございますっ!そして改めてよろしくお願いします!

さっちょんさんのサイト
AM3:40

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