「詩ーっ!!」

晋作さんがわたしを呼ぶ声がする。
なのに姿が見当たらない。

声は確かに広い庭に響き渡っている。

けど


「晋作さーん? どこですかぁー?」

見当たらない。

ここだー!って叫んでる声は聞こえるけど、"ここだ"じゃ分かりません!





「桜の木のとこだ!」

そうならそうと先に言って欲しかった。
着物が着崩れないように、出来るだけ急いで向かう。



晋作さんは桜が好きだから、わたしのこの着物も桜柄。

「好きな女に好きな桜!最高だ!!」
なんて言いながら嬉しそうに、この着物を持って来てくれた。
だから、わたしも嬉しかった。











「…あれ?晋作さん?」

見渡しても人影は一向に見つからない。


「ここだ!」

だから、"ここだ!"じゃ分からな…

「あっ!」


桜の木の傍でむくりと起き上がる人影。
パタパタと近寄って行くと、上半身からはらはらと花弁が落ちるのが見えた。

恐らく、大の字になってたんだろう。


「もう!探しましたよっ!!こんな所で寝てたら風邪ひきますよ」

「まぁまぁ」


桜まみれでご機嫌な晋作さんは、こいこいとわたしを呼んで隣に座らせた。





よいしょの掛け声で、わたしの膝に頭を乗せる。

「ちょっ…晋作さん!」

「花見だ!」


あっけらかんと言い切るから、諦めて一緒にお花見。






満開の時期を少し過ぎて、風がそよぐたびに花弁を散らせている。
あと3日もしたら全て散ってしまいそう。

その儚さは、普段の晋作さんには似合わない。でも、晋作さんに一番似合う花。

迫る闇に抗いながら、懸命に灯火を灯し続けている。
儚く、強か。






そんなことを考えながら、晋作さんの髪に指を通す。


ふっと笑いながらわたしを見上げた。

「綺麗だ」

「え?」

急に言われて、照れてしまう。




「詩じゃなくて、桜がな」

「 !! もうっ!!」

一人で勝手に照れてバカみたい。
恥ずかしくて、晋作さんの頭をぺちぺちする。


ふと真剣な顔になって、頭を叩く手を握る晋作さん。





「詩は、可愛いんだ。綺麗には、俺がする」

真剣な眼差しは、痛いほど愛しい。

「だから…   」

「ぇ?」


良く聞こえなくて顔を近付ける。
頭に手をまわされて、強く引かれる。


「きゃ、……っん…」









ちゅ、と音をたてて離れる唇。



「詩、綺麗だ」














桜色に染まる頬

(ずっとこうして綺麗なままで)



終幕

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あとがき


危ない危ない。
途中ギャグになりそうだった!!ww

甘甘のはずが、ギャグとか笑えないorz笑

小娘ちゃんが、盛大にツッコミをしてますね、はい。


詩様に捧げます


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相互感謝という事で頂いちゃいました!
「甘甘で!」とリクエストしたところ
・・・晋作さん素敵すぎる(*^^*)!

なお様、ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします

なお様のサイトはこちら
oranger

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