ぼやき | ナノ
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※死ネタ注意
 歪んだ愛注意






「面白きこともなき世を面白く」彼はそう言って瞼をゆっくりと閉じた。外は真っ暗。私は夜明けまで泣いた、泣いて泣いて泣き続けた。もう何時間泣いたんだろう。頭の片隅でそう思うけど、涙は止めどなく流れる。涙が枯れないのは本当だったんだ。そう思うとまた涙が溢れる。涙が落ちて着物には大きな染み、瞬きをするたびに瞼がひっつきそうなくらい重い。彼はもっと辛い想いをしたのだろうか、彼は楽になれたのだろうか。もうすぐ日が昇る。ゆっくりと明るくなる視界。次第に彼の安らかな顔が見えてくる。彼はうっすらと笑みを浮かべていた。痛みも辛さも感じさせない柔らかな笑顔だった。そっと頬に触れてもあの頃の温もりはもうなくて…。悲しくて仕方がないのに、「良かったね」って彼に声を掛けたくなる。彼が苦しんでいたのを私が一番よく知っている。立ち上がり、顔を洗うため井戸に向かう。私は彼の分も生きなければならないのに…、彼の元へ逝きたい。冷たい水で顔を洗い、天を仰ぐ。ああ、空は眩暈がするほど澄んでいて青いのに、どうして彼はもうこの世にはいないのだろう。彼は、彼の魂は今どこに在るのだろう。私はひとりぼっちになった。何日経っても彼の最期は受け入れられなかった。どうして、私を置いて逝ったの?私はこれからどうすれば良いの?もっと空が近ければ良いのに。私は強くならなきゃならないのに。…でも私も逝きたいな、貴方の隣へ…。もう一人きりは嫌なの。彼が愛用していた刀をそっと鞘から抜く。真っ赤に染まる視界の裏で、彼の笑顔が見えた。彼の笑顔は余りにも綺麗で…、ああ、私は汚い。貴方はこんな私を許してくれる?連れて逝ってくれる?貴方の隣に…。


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