子犬ちゃんと子狐くん


※動物パロ


 むかーしむかし、あるところに赤い毛並みのかわいい子犬がおりました。子犬の名前はスレッタ。
 スレッタは水星の森をパトロールするのが日課でした。森の中は広くて、たくさんの宝物が落ちています。宝物を探してたくさんの動物たちが森を探検しに行きますが、宝物に目を奪われすぎて森で迷子になる動物も少なくありません。
 そんな時スレッタの出番です。自慢の鼻でみんなの居場所を突き止めて、お家まで帰らせるのがスレッタの大事なお仕事でした。

 スレッタは森を歩いていました。
 今はアスティカシアという森の動物たちが集まる学校で、故郷の森へ動物たちを呼ぶための勉強をしています。白い毛並みの少しツンとした猫さんや、よくわからないライオンさん、人間の里に近いところにある森からきた仲間たちと日々を過ごしています。

 アスティカシアの森は広く、お昼ご飯を食べるのにぴったりの場所です。各々のびのびとご飯を食べる生徒たちが見えます。
 お日さまが降り注ぎ、柔らかい緑の影が地面に落ちて、寝転べばすぐにでもお昼寝できてしまいそうなくらいのいい天気でした。ふかふかの葉っぱのカーペットの間には時々どんぐりも落ちています。
 スレッタがご機嫌に暖かな道を歩いていると、がさり、と音がしました。音がしたのは太陽の光が当たらない暗い木陰です。木の根の向こうから少しだけ、耳が見えます。
 …あれはエランさん!
 スレッタは慌てて駆け寄ります。
 エランさんは光に当たるときらきらする毛並みを持つ高貴な狐さんでした。
 エランさんはぴったりと目を閉じて眠っているようです。耳を近づければ微かに呼吸する音も聞こえたので、スレッタはほっとしました。
 きょろきょろと周りを見渡しても誰もいません。一人で眠っていては誰かにいたずらされちゃうかも!
 スレッタはエランの隣にすとん、と座るとお昼ごはんを開けました。ふかふかのパンと、白猫さんからもらったトマトで作ったジュースです!
 思わず尻尾も揺れちゃうくらいおいしそう!いただきます!
 スレッタがぱくぱくとお昼を食べていると、隣から視線を感じました。ちらり、と目を向けるとなんとエランさんが起きています!

「ごごごごめんなさい!起こしちゃいましたか?!」
「ううん、大丈夫。もうこんな時間になってたんだ」
「エランさんずっとここにいたんですか?」
「うん…」

 うとうとしているのか、少しばかり返事が上の空なエランさん。スレッタは珍しい姿をまじまじと見つめました。
 エランも同じように見つめ返します。ここが木陰でよかった。お日さまの当たる明るいところだと、どこから嗅ぎつけたのか上の兄と下の弟がエランをからかいにきてしまいます。

「…そうだ!エランさんこれ半分こしましょう!」

 スレッタは手に持っていたパンを半分に分けました。ほかほかとしてまだ温かさを残しているパンをエランの手にそっと乗せます。

「いいの?」
「はい!二人で食べるともっとおいしいですから!」

 スレッタは耳と尻尾をぱたぱたと揺らしてにこにことしてします。つられてエランの尻尾もゆらゆらと動きます。

 「ありがとう」
 「…!はい!」

 エランのほほえみに自然とスレッタも笑顔が増えます。なんだか宝物を見つけたみたい!胸いっぱいの気持ちです。

 ぽかぽかとしたお昼の時間はまだ始まったばかり、二人は仲良くご飯を食べて穏やかな午後を過ごしました。

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