ぬくもりと若草


※4号スレ
ふわふわな二人
ほのぼの時空


 眠りから覚めると視界を埋めたのはこちらを見つめるエランさんの瞳だった。

 ことの始まりは今日のお昼だった。せっかくなら一緒に食べませんかとエランさんにメールを送り、午後に授業もないしどうせなら購買で何か買って部屋で食べるのはどうだろうと提案された。思ってもないお誘いに頭の中でさまざまな小説やアニメが走り抜ける。「君のことが知りたい」とあの時言ってくれたように、私もエランさんのことが知りたい。他ならぬエランさんの部屋に招かれるということに緊張したが勢いをつけてOKの返事を返した。そうと決まれば午前の授業は頑張らなくてはならない…!
 そうやって午前を何とか過ごし、エランさんと落ち合った。いつも通り本を読みながらベンチに座る様は憂いを帯びた顔もあって王子さまのようだった。

「お待たせしました!!エランさん!!」

 サンドイッチやコーヒー、少々のお菓子。二人で購買を歩き、食べたことのない味やお互いの好きなものを買い集めてようやっとペイル寮のエランの部屋にやって来た。

「ぉ、お邪魔します…!!」

 慣れない場所に緊張しているのかそろりそろりと部屋に入ってくる姿に小動物を重ねたのかエランはくすり、と微かに笑っていた。殺風景な部屋にぽつんと置かれた机の上に買ったものを広げてスレッタは最近受けた授業や地球寮での様子を話した。身振り手振りを交えながらころころと変わる表情はかわいらしく見るものを惹きつけてやまない。
 そして今、その顔を独り占めすることができているのはエランだ。

 一通り話し終えて少しばかり手持ち無沙汰になる頃、隣に座っていたエランがふとスレッタにむかって腕を広げた。

「え、ええええエランさん?!どうしましたか、?」
「ここに来て」
「え、ここっ、あっっえっ!?」
「嫌?」
「ぅあ。いやでは、ない、ですが」
「なら、」

 ベッドの上に正座するように座り直し、エランは再び腕を広げた。

「どうぞ」
「あ、ぅ、失礼します…?」

 そっと広げられた腕の中に収まる。氷の君と呼ばれる彼も緊張しているのか、どうなのか布越しでも暖かな体温を感じられた。ぎゅ、と背中に回された手に力がこもる。その手がなんだか縋ってくるようで彼は寂しいのだろうかと思った。
 何も言わずただずっとエランはスレッタを腕の中に抱き続けた。
 時間が経つと自分の体温と合わさってなんだかひとつになってしまったような気すらした。うとうととまぶたがおちる。

 そうして始まりに至る。
 くっつくことによって生まれたぬくもりと時おりエランに頭を撫でられることによるくすぐったさでひどく安心してしまって、少しばかり寝てしまったらしい。

「おきた?」
「おはようございます…。ごめんなさい!!寝てしまいました…」
「大丈夫。君は暖かいね」
「えへへ。…エランさん私の寝顔見てたんですか…?!」

 ひゃーはずかしいとスレッタは頬に手をやった。腕がぐっと伸びてスレッタを包み込む。くすぐったそうで、にへにへと嬉しいという気持ちが溢れんばかりのえがお。
 そんな彼女を見ているとなんだか心の奥がむずむずする感じがする。なにかしたくて叫びたくなるような、なんというかそう。
 これが幸せって感覚なのかもしれない。

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