ひだまりふたり


 バラムガーデンで生徒として過ごすようになってリノアは刺激的な日常を過ごしていた。
 普通の学校なら学ぶことはない、傭兵として生きる道を示された彼らのための授業の大切さを身をもって知ることができる。そして蝶よ花よと守られているはずだったリノアの身を守る術を増やし、共に戦った仲間たちの生活を知ることができるのだから。
 授業でわからないことがあれば教師に尋ね、図書室の本も読み漁るリノアの勤勉なところはすぐにガーデンの人間たちに受け入れられていった。かつてより感情のわかりやすくなった彼女の騎士は少ししかめ面をしていたけれど。
 休日になればリノアはスコールと共に過ごしているところがよく見られた。時々通りがかった仲間たちに揶揄われてくすぐったそうに追い払う彼の姿も見られるため、ガーデンの見られたらラッキーな名物イベントと影では噂されている。

 今日の休日もそんな一日になるかと思っていた。
 デート前日の夜、リノアは課題のわからない箇所をリストアップしている。彼女だけの特別講師になってくれるスコールにわかりやすく尋ねられるように、キスティスやセルフィにアドバイスをもらったのだ。キリのいいところで手を止めて明日に備えるためにベッドへ入り、はやる気持ちを抑えて眠る。
 早起きをしてアンジェロと朝ごはん。顔を洗っていつもの服に袖を通し気合いを入れた化粧をする。鏡を何度も覗いて最終チェック。アンジェロにお留守番を頼み、るんるんと部屋を飛び出した。
 廊下をすたすた進んでスコールの部屋の前まで来ると扉が開いた。どうやら同じように早起きをした彼がリノアを迎えに来てくれようとしたらしい。驚いた表情の彼を見て嬉しくて飛びついてしまう。少し照れくさそうな顔をしてスコールはリノアを受け止めて、部屋へ招き入れた。

 リノアがリストアップしてきたわからない箇所をスコールは一つ一つ丁寧に教えてくれた。もともと生きる世界が違うはずだった彼女にもわかりやすいよう本まで借りてきて、優しく。アーヴァインやゼルにアドバイスをもらいつつ、スコールなりに考えたチョイスの本ばかりだ。
 集中するリノアに一息休憩を入れようと声をかけ、同じ姿勢ばかりしていた体を動かす。
 キッチンへ向かい自分の分のコーヒーとリノアの為のカフェオレを入れて戻ると、リノアがテーブルに突っ伏していた。一声かけてリノア専用の羽のマークがついたマグカップをこん、と置くとありがとうぅなんて力の抜けた返事が返って来る。
 いつもはお喋りなリノアもこういった時間は物静かだった。日の光もほどよく入り、開け放たれた窓から入るそよ風。
 穏やかでお互いに安心しきった空間は疲れきったリノアの頭に眠気を誘ったらしい。こてん、とリノアが肩に寄りかかる。こんな光景以前の自分からは考えられないな、とスコールはぬるくなったコーヒーを飲んだ。
 あまりにぐっすりと眠っているところを起こすのももったいなくスコールは読みかけの雑誌を開いた。けれど文字はそこまで頭に入らず、ただただ目で追うくらいしかできない。
 スリプルをじわじわとかけられるように眠気がやってきた。パタリと本を閉じ、リノアの頭にそっと頬を寄せる。
 ついこの間、部屋につけたいと彼女が持ってきた銀の星が描かれたカーテンが揺れている。ちかちかとラメが瞬くと星が光っているように見えるところが好きなのだ、と笑っていたんだか。
 こうして微睡みながら幸せな日々を自然と思い出せるようになった自分に、なんだか違和感はあるけれどひどく満たされるような気持ちになる。

 この日々を守れるようにと思いながら、今度こそ彼女につられるように目を閉じた。

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