プロスペラSS
エリィ、エリィ、小さなおちびさん
あの時怖い思いをさせてごめんね
一人で寂しかったよね
ママもパパもルブリスにかかりきりでごめんね
ケーキも食べたかったね
エリィ、小さなおひさま
ミルクみたいな匂いも柔らかい肌ももうないの
でも、だいじょうぶよエリーだいじょうぶ
ママもうあなたを置いていったりしないわ
▽
ざりざりと砂を掴む音がする。短い赤い髪の女が何事かを呟きながら俯いている。
エリィエリィエリィどこにいるの?
ママに怒っちゃった?
ごめんね ごめんねごめんね
ナディム エリィがいないのエリィがいないのよ
ナディム?ナディム?一緒に探しに行きましょう
みんなみんな先生 私が今度こそレイヤー33へ
パーメットリンク成功させますから
無感情にただ呟いている。亡くしたものを探している。
腕の中のぬくもりも、己を包んでくれるぬくもりも、もうない。
争いが全て奪っていった。
「お母さん」と後ろから声がする。
あの子によく似た、「ママ」とは呼ばない、純粋にただただ私に縋る小さな子。
もうわからなかった。見えない空論に縋るしか道はなかった。
最高傑作たち。あの子に似た子ども、ルブリスに似た機体。
一度失ってしまえばもうどうでもよかった、よくなってしまった。
どうせ失うのなら向こう側の世界が本当ならば、ここで持つ体に意味などないのだと。
争いが生まれるのなら、争いのない世界へと。