プロスペラSS


エリィ、エリィ、小さなおちびさん
あの時怖い思いをさせてごめんね
一人で寂しかったよね
ママもパパもルブリスにかかりきりでごめんね
ケーキも食べたかったね
エリィ、小さなおひさま
ミルクみたいな匂いも柔らかい肌ももうないの
でも、だいじょうぶよエリーだいじょうぶ
ママもうあなたを置いていったりしないわ



ざりざりと砂を掴む音がする。短い赤い髪の女が何事かを呟きながら俯いている。

エリィエリィエリィどこにいるの?
ママに怒っちゃった?
ごめんね ごめんねごめんね
ナディム エリィがいないのエリィがいないのよ
ナディム?ナディム?一緒に探しに行きましょう
みんなみんな先生 私が今度こそレイヤー33へ
パーメットリンク成功させますから

無感情にただ呟いている。亡くしたものを探している。
腕の中のぬくもりも、己を包んでくれるぬくもりも、もうない。
争いが全て奪っていった。
「お母さん」と後ろから声がする。
あの子によく似た、「ママ」とは呼ばない、純粋にただただ私に縋る小さな子。
もうわからなかった。見えない空論に縋るしか道はなかった。
最高傑作たち。あの子に似た子ども、ルブリスに似た機体。
一度失ってしまえばもうどうでもよかった、よくなってしまった。
どうせ失うのなら向こう側の世界が本当ならば、ここで持つ体に意味などないのだと。
争いが生まれるのなら、争いのない世界へと。

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