グエスレ/ミオスレ


 グエルの手には紅い何かがあった。それは本当についているわけではなく、それは今にも潰れてしまいそうな心が見せた幻だった。あんなに逃げたくて苦しくて追い詰められて。やっと一つ進めたはずだった。負けが続いて、やっとの勝利。それはゲームではない、無秩序な大人の世界の中だった。この手にあるものが彼女の髪ならば、彼はぼんやりとした意識の中でそう願った。
 スレッタはふと考えていた。何を考えているかわからなくて、横恋慕して、お父さんが大好きな人間のことを。彼に対する気持ちの名前はわからなかった。でも確かに強い人で、決して約束を違えぬ人だった。
/グエスレ


 ミオリネは全てがわからなくなった。夢ならば、ゆめならば、悪夢ならば起きれば終わる。やっと向き合えた父も、花婿も、会社も。これからうまくいくはずだったのだ。何も知らなかった。血だらけの手を差し出す無邪気な笑顔は何を考えていたのだろう。何があったのだろう。項垂れるように彼女の背後に傅く機体はどれだけの恐ろしいものなのかを。あの日知ってしまった。
 スレッタの怯えはもうなかった。自分が戦わなければ誰も助けられないと知ったとき、頭には逸れた花嫁の姿があった。"みんな"がいれば怯えることなんてないことを、エアリアルがいれば負けることなんてないことを。水星でだってやってきた誰かを助けるための勇気のお呪い。
 スレッタの怯えはもうなかった。
/ミオスレ

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