星色の天蓋


 ひんやりとしたコクピットを少しずつ温める。
 中に眠る僕の小さなパイロットさんの安眠を守るためだ。
 今日は水星の老人にイジワルされなかったのだろう、泣き跡のない寝顔に安心する。
 いい子で優しいスレッタはイジワルしてくる老人たちも等しく助ける。
 本当にいい子なんだ。でも僕らに感謝することもなく大声で責め立てるようなやつもいる。そんな人は助けなくたっていいんじゃないか、と思うこともある。
 でもスレッタが助けたいと言うのなら僕はスレッタの望みを叶えてやりたい。僕らは水星で最強のコンビ。僕らに敵うやつはここにはいないから。

 ただ、スレッタが今日あったことを僕に話してくれるたび、僕がもっと自由に動けたならと思うことがたまにある。
 スレッタにイジワルする老人からいつでも守ってあげられるし、お母さんがいなくて寂しそうなスレッタに寄り添ってあげられる。基地内をわざわざ歩いて来なくたって僕から行ってあげられる。

「うぅん、」

 スレッタが小さく寝返りを打った。その声にはっと意識を戻す。
 スレッタが読んでいた漫画のせいだろうかぐるぐると思考を埋めた考えを振り払う。僕は僕のままでスレッタと一緒にいるんだ。ないものを考えるより、これから掴めるものを。
 スレッタがどんなところへ行こうとも僕も一緒について行くよ。

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