春がきたなら


夢みたい/ハロ/意識してください


 スレッタ・マーキュリー。口の中でころころと彼女の名前を転がした。赤い髪も小麦色の肌も何もかもが太陽のように周りを照らす。その輝きは自分を焼き尽くし、まるで不死鳥の輝きに触れたかのように灰の中から掬い出した。…思考が飛躍していた。どうにもスレッタといると落ち着かない。花畑の花は風でそよそよと揺れている。
 すれった。そう彼の口が動いたのをスレッタは見逃さない。音にはならずただ口の動きだけだったが、たしかにそう言っていた。当の本人は考え事をしているようで、ぼんやりとどこかを見つめている。だから無意識のうちに漏れ出たものなのだと思うとスレッタの胸はいっぱいになってしまう気がした。
 2人きりの草原には誰もおらず、ただ白い花たちが取り囲むばかりだった。だから今がいつなのかも、何時何分なのかもわからない。青空と太陽、広い草原。お伽話の中にいるみたいです!とスレッタは楽しそうに笑っていた。自分が不純物となってしまったようで居心地が悪い。悪夢みたいに幸せな夢。起きなければこのままでいられるのだろうか。

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 ハロはとことこと歩いていた。うつろぼんやり朝ぼらけ。朝の警備を任されたただのハロ。生徒たちはまばらで、怪しい奴がいれば一瞬で分かってしまうくらいだった。廊下があまりに長いのでふわふわふよふよプロペラを回して柔らかなベールの中を進んでいると、向こうで生徒2人が何かをしていた。薄緑と赤。くすくすと2人で何をみているのやら、そっと後ろを通り越して怪しいモノでないか確認をする。

「エランさんエランさんこれ素敵ですねえ」
「君は着たい?」
「えっ?!えっ、とぉ」

ふぅんなるほど。2人の手の中の雑誌は白いドレスを着た人間が載った雑誌のようだった。怪しいモノではなかったようで一安心。…ササ、警備に戻ろう。真っ赤になった赤髪と、真剣な顔の薄緑はハロに気付かないまま秘密の内緒話を続けていた。

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 エランさんの頬に手を当てるとひんやりとしていて、柔らかくてとても気持ちよかった。ちょっと目をうろうろとさせたエランさん。でもすぐにきりりと真っ直ぐな目でわたしのほっぺに手を当ててきた。大きな手のぬくもりが心地いい。そのまま勢いに任せてキスをした。真っ赤なかお。エランさん意識してくれたかな

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