ゆるふわエラスレ小話


※6話後if
時系列ふわふわ
なんだかんだで生き残った4号
ちょっと感情表現が素直
モブ複数登場

extra (ex)
エキストラ 臨時のもの
エクストラ 特別の
reserve 予備


ねえねえ、知ってる?
なになに?
水星から来たあの子と氷の君が2人で会ってたんですって!
なにそれ!ただの噂話でしょ?
それがね…

1 お菓子
side E
ーー時刻は数分前に遡る。
 エランはいつものようにスレッタとお喋りをしようとベンチへ向かっていた。週末に時間ができた時、どちらからともなくお決まりの場所に集まって最近の話をするのが2人のブームになっている。
 スレッタかエランどちらかが飽きてしまえばこの集まりもなくなるだろうが、そんな日はこないのでこの話題はここでお終い。
 エランが時間に余裕を持って集合場所に行くとスレッタが見えた。目立つ赤髪はもちろん、今日はその腕の中に見える袋が一際存在感を放っている。顔を見ると表情は何かを決意しているようなしかめ面になったり、袋を見つめて悩まし気になったりと百面相をしている。

「…スレッタマーキュリー?」
「エランさん!!!こ、こんにちは!」

 こちらに気づくことなく下を向き続けるスレッタにどう声をかけたらいいか分からず、至ってスタンダードに話しかける。顔を上げてまんまるの、透き通るようなスレッタの眼に射抜かれる。

「こんにちは。…何か困ってるの?」
「あっ、えっと。その…!」

 身振り手振りで何かを伝えようとしてくれるスレッタの言葉をエランはゆっくりと待つ。もごもごと動いていたスレッタから意を決したように言葉がこぼれる。

「じ、実はお菓子を作ったので、エランさんがよければ……」

 もらってください、と尻すぼみな声と共にスレッタが抱えていた袋が渡される。口元が緑のリボンで結ばれて、中にはクッキーが数枚。

「ありがとう。これ、君が作ったの?」
「はい!地球寮の皆さんと一緒に!…でも初めて作ったので美味しくなかったら言ってください!!」

 緊張しているのかスレッタは矢継ぎ早に言葉を投げかけてきた。初めてだという割にはクッキーは割れてもおらず、大小形の差はあれどおかしな部分は無さそうだ。

「食べてみてもいい?」
「ぜひ!」

 リボンをほどき、一枚取り出し口にする。バターの良い香りが口の中に広がり、ほろほろと崩れておいしい。

「美味しい。ありがとう。もらえるなんて思ってなかった」
「よかったです…!!」

 嬉しそうに笑うスレッタ。口元に当てられた手にはところどころ絆創膏が貼ってあった。

「手、どうしたの?」
「あっ!えっと慣れないオーブンでやけどしてしまって…」

 恥ずかしいと思ったのか後ろに手を隠そうとする腕を思わず掴む。

「…人にも…」
「え?」
「他の人にも、作ったの?」

 らしくない。でも気になって聞いてしまった。別に誰に作っていようがスレッタの自由なのに。

「こ、これ!いちばんいいの持ってきたんです」
「いちばん」
「エランさんにも渡したくて、でもあげるなら一番いいのあげたくて。ミオリネさんとか地球寮のみんなが助けてくれて、失敗作も食べ比べしてくれたんです」
「…そう、なんだ」
「エランさんに贈りたかったので頑張りました!」

 再度お礼を言い少し会話をしてスレッタとは解散した。
 エランの頬を柔らかな風が撫でる。熱で暑くなった肌には心地いい冷たさでエランはらしくなく自分の気分が高揚しているのだとわかった。視線を落とせばかわいらしくラッピングされたお菓子の入った袋。
 大切な人からもらったそれを落とさないよう大事に抱え直すと少年は小走りに寮へと帰っていった。

side Extra
 はあーーーー。まさか居眠りの罰に授業の道具を運ばされるとは思わなかった。あの堅物教師。今度あったらハゲにしてやる。手伝ってくれた友人には好物のスパゲティでも奢るのを忘れないようにしないと。
 寝不足の頭でふらふらとペイル寮の廊下を進む。あの曲がり角を曲がれば自分の部屋に着く。散々な今日も寝てしまえばなんとかなる。
 曲がり角に近づくと誰かが早足に来る音が聞こえた。ぶつからないよう速さを調整しながら誰が来るのか見ていると、エラン・ケレスだ。珍しいこともあるもんだ。何かを大事そうに抱えながら足早に去る姿。
 俺にはわかる。あれはきっとスレッタ・マーキュリーからの贈り物だ。
「氷の君の珍しい姿を見れた人はいいことがある」 とは誰が噂し出したかペイル寮の運試し。まあ俺しか噂してないし、俺がこっそり思っているだけだ。
 しかし、ほんとレアなものが見れた。今日はなんだかんだいい日なのかもしれない。あんな赤い顔のご機嫌そうな氷の君を見られるのって豪運だろ?

=========

えっ!
いつも人からものを貰わないあの氷の君が?!
そうなのよそうなのよ絶対好きなのよあの子のこと
それだけで決めるの早いよ!
まだ続きがあるのよ…

2 お弁当
side E
 スレッタ・マーキュリーからもらったお菓子を少しずつ腹に収めながら、エラン・ケレスは思案した。
「いちばん」いいものを贈りたいと思ってくれたスレッタ。じゃあ自分は何をあげられるだろう。本…自分の読んでいるジャンルはスレッタにはつまらないものかもしれない。じゃあお菓子、ううん。どうせなら一番いいものを作りたいから時間がかかるかも。でもお礼なら同じものを…。
 くるくるぐるぐる。脳みそフル回転で考える。ものを貰うことを嬉しいと思うなんて久しぶりだ。それもスレッタ・マーキュリーからもらったものだからなおのこと。ああでもないこうでもないと悩みに悩んだエランの頭にふっと一つ閃きが。
 あ。そうだ。お弁当。
 エランの頭に唐突に浮かんだのはスレッタのやりたいことリストのピクニックだった。お弁当を作って空いているところでご飯を食べてみたいと話していたような。
 前は急げ、ピクニックに行けなくても持ち帰ることができてお手軽なものがいいだろう。端末を取り出しレシピを探す。普段はレーションや携帯栄養食のようなものを口にしているから、ひとかけらの不安。…よし。これでいいだろう。
ーーそうして試作を重ねて週末。スレッタと昼を食べる約束を取り付けてもうすぐその時間。エランは一時間も早くやってきてスレッタを待っていた。
 バスケットを抱えて座る氷の君の姿に、道行く生徒はこそこそと何か噂話をしているようだ。しかし、エランにそんな彼らの姿は目にも耳にも入らない。頭の中はおそらく初めて作ったであろう他人への料理の出来でいっぱいだ。ベルメリアにもらったバスケットが割とかわいいうさぎ柄なことが噂の種になっていることにも気づかない。

「エランさーーん!お待たせしました!」

 スレッタの声が聞こえた途端、バッと俯いていた顔を上げ、みるからに嬉しそうな雰囲気を出し始めた。

「エランさんとご飯食べられるなんて嬉しいです!」
「僕も。この間の、お菓子のお礼だよ」
「わああ!サンドイッチ!美味しそうです…!」

 バスケットを開き中から昼食を取り出す。エランの髪と同じ色の布に包まれた箱、それをぱかり、スレッタが蓋をとる。
 中にはレタスとハム、ゆで卵とマヨネーズ、トマトとチーズという組み合わせの3種類ほどのサンドイッチが入っていた。他ならぬエランさん手作りの昼食。きらきらとした目で中の一つを選ぶと「いただきます!」とスレッタはかぶりついた。

「んーー!こへおいひいふぇす!」
「飲み込んでからでいいよ」

 バスケットを探り水筒を取り出す。中には暖かな紅茶を淹れておいた。蓋に紅茶を注いでスレッタに手渡す。

「ぷは、ありがとうございます」
「喜んでもらえたみたいでよかった」
「楽しいです…!やりたいことリストひとつ埋まりました!」

 花のような笑顔がぱっと咲くたびエランの心は浮き足立つような、なんというか落ち着かないむずむずとしたものになる。スレッタは既に一つをぺろりと食べ終えるて違うサンドイッチに手を伸ばしていた。

「ミオリネ・レンブランのトマトも使ったんだ」
「ミオリネさんの…?!よくもらえましたね?!」

 驚きながらもあんまりにいい食べっぷりにエランは食材集めを頑張ってよかったな、と昨日を思い出した。

side M
 温室でいつものようにトマトのお世話をする。スレッタに任せようと思ったが、ここ最近はエランと楽しそうにしているから邪魔はしないでおくことにした。花嫁花婿の関係が維持されていればいい。私は理解ある花嫁だし。
 やきもち、というよりは単純に友だちが交流の輪を広げて新しい友だちとの遊びに夢中になっていることがつまらないような気持ち。スレッタが悪いわけではなく、エランが悪いわけでもなく。スレッタが楽しそうならそれでいい。
 単純作業で頭は無駄なことばかり考えてしまう。ふと、足音が聞こえることに気づいた。振り向いてみるとそこに居たのはエラン。伏し目がちな目は温室の入口付近で止まり、私を探しているのかきょろきょろと控えめに動いていた。

「何か用?」
「…トマトをもらえないか」
「トマト?なんであんたなんかに」
「スレッタ・マーキュリーに、料理を作りたい」

 作業する手が思わず止まる。
 スレッタに?料理を?あのエランが?
 エランの顔はひどく真面目で表情一つ変わっていない。真剣に私に頼んでいるのだろうとはわかった。頷かないとてこでも動かなさそうな雰囲気。

「まあ、スレッタにあげる料理の中に私のトマトを入れようと思ったその考え、悪くないわね」

 それならばよりいいものを摘み取らなくては、温室内を見渡し良さげなトマトを探す。

「見繕うからちょっと手伝いなさい」

=========

2人でご飯を…?
そうよ
つ、付き合ってる?
いいえ
見せつけてるの…???
たぶん2人にそんなつもりはないわね

3 写真
side S
 エランさんとのお昼ご飯はすっごく楽しくて、とっても美味しかった!手作りのサンドイッチはどの種類もほっぺが落ちちゃいそうでたくさん食べてしまったのはちょっぴり恥ずかしい。たまごのサンドイッチはぷりぷりの白身とマヨネーズの相性がよかったし、ミオリネさんのトマトもみずみずしくてチーズとの相性は抜群だった!あの後、ミオリネさんにも美味しかったことを伝えると「ま、そうに決まってるわね」なんて自信満々でかっこいいなあって思いました。
 最近、エランさんとたくさん遊んで、色々なことに付き合ってもらっている。誰かにこの嬉しいって気持ちをお話したくなって、エアリアルにここ数週間のことをおしゃべりしていると、ちかちかとモニタを光らせて相槌をうってくれた。次は何をしようとライブラリを見ていると、写真、自撮り、ツーショットをとっているシーンがあるコミックを見つけた。
 そういえばわたし、エランさんと写真を撮ったことない。コミックの主人公は友だちと楽しそうに写真を撮っている。わたしもこれ、やりたい…!
 善は急げとばかりに次の日、いつものベンチに座っていたエランさんに声をかける。

「エランさん!写真撮りましょう!」
「写真…?」
「はい!新しいやりたいことリスト、です!」
「いいけど…あまり撮ったことがないんだ」
「わたしも、です。おんなじですね!」

 コミックで見たように隣り合って座り端末を掲げる。カメラを起動して画角を調整。2人がちゃんと写り込むようにしていざ一枚。撮った写真を見返すとなんと2人して目をつむっている。

「…ふふ」
「す、すみません!!しゃしんむつかしい…」

 間抜けな表情にかあっと顔が熱くなる。次こそ次こそ。何枚かチャレンジしているうちに自分たちにも余裕ができてピースしてみたりポーズもとれるようになってきた。
 ふと、ちらっとエランさんのお顔を見るとちょっとだけ微笑んでいて、なんだか胸がどきどきしてしまいそうだった。
 たくさん撮った写真をエランさんの端末にも送ってまた撮りましょうと約束を交わした。
 えへへ、楽しい。次はエランさんとどんなことができるだろう!

side F、P
 ちらちらちらちら。
 水星女を見かけるたびに気にするグエル先輩にじれったく。かと言ってそういう雰囲気にもできるほど水星女といい関係も築けていないため、じゃあわたし達見てきます!!とジェダーク寮を飛び出した。「お前達ぃ!!!」とラウダ先輩の声が聞こえた気がしなくもないが。勢いだけで寮を出てきたが、そういえば水星女の居場所を私たちは知らない。
 とりあえず地球寮にでも行けばいるだろうか。フェルシーと連れ立ってとぼとぼ歩いていると、遠くに若草色。あれは…。こちらに向かってきたので思わず2人で隠れる。そっと柱の影から覗くと歩いているのは…、珍しい、スーツ姿のエランケレス?だ。なんだか普段より生意気そうな顔に見える。こちらに気付くことなくどこかへ立ち去って行ったのを確認して廊下に出る。
 そういえば最近氷の君と水星女がよく一緒にいるらしいと噂になってたっけ。向こうから来たってことは地球寮に水星女はいるのだろうか。黙々と思考の海に浸っていると、

「ぺ、ペトラ、ね、あれ……」

 フェルシーが裾をいきなり引っ張って再び柱に引っ張られる。

「フェルシーちょっといきなり何!」
「あれ、水星女と…」
「水星女がなに、よ…」

 フェルシーがわなわなと震える指先で指した方を見る。赤毛の水星女と一緒にこちらにやってくる影。エラン・ケレス。氷の君。冷ややかな伏し目がちの。
 …あれ?じゃあさっきのは?そっくりさん?
 フェルシーは強張った表情でこちらを見る。私の表情もたぶん強張ってる。2人は和やかに会話をして、廊下の奥へと消えた。
 私たちもすぐに飛び出してジェターク寮へと帰還した。しばらくは絡んでやろうとする気持ちすら湧かなかった。

=========

もういいもういいもういってば聞きたくない
あらそお?氷の君の新たな一面喜ぶと思ったのに
わたしに向けられたものじゃなきゃ意味ないじゃない
確かにね、じゃあこの話はおしまい
おしまい

……そういえば氷の君ってさ
?ええ
たまに2人いるみたいに別々の場所で見るよね
…え?

4
side EX
「あいつ最近ご機嫌だな」
「スレッタとの交流が4号にとっていい経験となっているのでしょう」
「ふーん。いつまで続くかね」
「……」
「それにしてもスレッタ・マーキュリー、ねぇ。「俺」がそこまで心動かされるなんてなぁ」

 ぐるぐると椅子を回すその顔はつまらなさそうに強化人士たちが映されたモニタを見ていたが、「様子でも見に行ってみっかねぇ」と冗談めかして言い、ベルメリアの返答を待たずに回転が終わるとおもむろに部屋を出ていった。
 後ろ姿を黙って見送ったあと、ため息をつくとベルメリアは端末を取り出した。つい先ほど「エランさんと写真を撮ったんです!」とスレッタが嬉しそうに報告してくれたのだ。4号はらしくなさげに微笑んでピースなんてしていて微笑ましい。同じ顔なのにオリジナルの可愛げのない性格まで似ているような子でなくてよかった、とベルメリアは安堵した。

side R
今の「俺」が最近何に熱心か知ってるか?
なんだい?「俺」
そりゃもちろんあの女!水星からガンダムと来たあれ!
近ごろのあいつったらあの女のためなら死んじゃいそうだよ
自分だけ幸せそうにしちゃってずるいよな「俺」
いいないいなぁ、スレッタ・マーキュリー僕もほしいなぁ
まあお前にいつか出番がきたらあるかもな
ほんと!
おれは死にたくないからいいかな。痛いし
ふふふ、早く会いたいなあ…

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