06




しばらくたったある日の事、

ボクはただあの小さな部屋の中で

もんもんと意識を巡らせていた。


ボクの傷は

首無の看病のおかげもあって、

すっかり癒えてきている。


「…………」


思わず赤面するボク。

もうなんなんだ、この


新婚夫婦みたいな毎日は……!!


ボクは違う意味で

はぁっとため息をついた。


ご飯のときはわざわざ首無が

食べさせてくれるし、

(こうスプーンを持って

ふーふー………っとかやってくれたり、)


包帯を変える時も

首無がやってくれるし、

(自分でできるって言ってるのに………、)


おはようからおやすみまで

ずっと首無がボクの面倒を見てくれる訳で、











……幸せすぎる毎日だ……………!!!!








 



そう心の中で本音を暴露したボクは、

次の瞬間に

大量の鼻血を出したという事は言うまでもない。







「おはようございます、楓」

「!!

 ……おっおはよう首無!」


ちょうど鼻血がとまった頃、

今日も朝から素晴らしい程の笑みを浮かべながら

首無が部屋に入ってきた。


……普段ならば

綺麗な女の人に向けられるであろうその笑顔は、

今だけはボクのもの。





    
そう、今だけは。






哀しい現実が胸をよぎったが、

せっかく首無と居るんだ。


ボクは無理に笑顔をつくった。


「今日は来るの早いね。

 どうしたの?首無」

「……」


……静かにボクに近寄る首無。


「…首…無………?」


…高鳴る胸。

えっちょっ近い様な気がしてるのは

ボクだけ……!?


「…なんで、そんなに悲しそうな顔をするの?楓」

「……え?」


びくっとするボク。


「何が楓を

 そんなに悲しそうな顔にさせるの………?」


…首無が切なそうに眉を顰める。


「………首無…………」


…せっかく首無がそう聞いてくれてるんだ。

ここは素直に言うべきなのだろうけどー………、



‘首無の笑顔がいずれ

 ボクに向けられなくなると思うと、

 哀しいんだ………’



………なーんて事を、






本人に言える訳がない…………っ!!!







黙ってしまうボク。

そんなボクをただじっと見る首無。


微妙な静寂が、部屋に漂った。



 

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