03





「楓ー!ちょっと来てくれない?」

「え?」


その日、ボクは突然つららに呼ばれたんだ。

急いでつららの元へ向かうボクは、

これから起こる事件の事なんかを

予知しているはずもなく、

いつも通りの表情を、

いつも通りの態度をとって、

いつも通りの生活を送ろうとしていた。


「今日入った新しい妖怪さんで、

 えっと名前は――」

「ゆかですっ!

 よろしくお願いします!!」


そう言って、

つららの隣に居る可愛い女の子の姿をした妖怪が

ボクに勢いよく頭を下げた。


「……ゆか、って呼んでいい?

 ボクは楓。よろしくね」


素っ気なくそう言うボク。

ああ、これだからボクには段々と人が

寄りつかなくなってくるんだ……。


「はっはい!

 よろしくお願いします楓さんっ!!」


そう言ってまたもやバッと頭を下げるその妖怪。

なんだか律儀な子だなぁ………。


「楓、どうせ今暇でしょ?

 この子に浮世絵町を案内してあげて」


ニコっと笑うつらら。


「……ボクが?」


目を見開く、ボク。

だってボク、こんなに無愛想だし……、

……本当にボクでいいのかな?


「他の皆は忙しいみたいだしさ、

 ねえっお願い!!」


そう言ってボクに頼むつらら。

…そういう風に言われてしまったら、

なんだか反論ができなくなってしまった。


「……いいよ。

 ゆか、ついて来て」


心の中に浮かんできた言葉をグッと飲みこみ、

すたすたと歩きだすボク。


「……っはっはい!!」


素直にボクの後ろについてくるゆか。

そんなボクに

「行ってらっしゃいー!ありがとー!」

と元気に声をかけるつらら。






その日は、血を零した様な赤い空をしていて、

なんとも不気味な夕方の事だった。








 

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