凍えるような寒さの日だとしても、私の手は基本的に暖かい。冷え症なの、と言ってはぁと息を吐く友達を見ながら、大変だねーなんて心の籠もらない返事をした。友達はさも恨めしそうな顔をして、こうしてやるー!って声をあげながら私の手を握り締めて体温を奪ってくる。学期末テストを目前に控えている今、友達とのお喋りが一番の気分転換なのだ。

そんなのんびりとしたお昼休みを過ごしていたときに、ふと五限の教科書を家に置き忘れていたことに気付いた。友達に断りを入れて隣のクラスへ猛ダッシュ。教室へ入ると、友達の顔と同時に二口の姿が目に入った。
「あれ、二口なにしてんの」
「青根に用があったんだけど、あいつ今飲みモン買いに行っててさー。待ちぼうけ」
「ふーん、青根くんってあの背の高い、ちょっと怖い?人だよね」
「分かってねーな、よく見ると結構楽しい奴だぜ。…それにしてもさみーな、この教室」
両手をこすりあわせて寒いと唸る二口。確かにこの教室、私のクラスよりも寒い。空調が壊れていないというのに。大事なことだからもう一度言う、空調の壊れた私のクラスよりも、だ。
二口の手を取ってみると、氷のような冷たさだった。なにこれ、本当に手?めっちゃ冷たいんだけど。
「二口、もしかして末端冷え性ってやつ?」
「…いや、どうだろな、普段は身体動かしてるからこんなにさみーのは今だけ」
「あ、そっか今テスト前で部活停止だもんね。こんな手でバレーやったら突き指しそう」
「部活停止って本当だるいんだよなー、あーもうさっさとバレーやりてぇ」
「二口って部活はお遊び、なタイプだと思ってた。なんか意外」
「失礼だな、っていうかさ」
「ん?」
「…いつまで握ってんの?」
本当だいつの間にか二口の手もぽっかぽか、じゃなくて無意識の内にずっと握ってしまっていた。ごめんごめん、と言いながら手を離す。
「二口の手ってなんかいいね、骨張ってて、おっきくて、バレー向いてる感じする」
「は?何言ってんのお前」
「何となく思っただけ」
二口は本当お前馬鹿、と小さく零すと教室を出て行ってしまった。一瞬見えた横顔は眉間に皺を寄せていて、でも心なしか怒ってるようには見えなかった。
そういえば青根くんを待ってるんじゃなかったっけ、とぼんやり二口の姿を目で追っていると、キンコーンとチャイムの音が耳に入る。ヤバい、教科書忘れたからここに来たんじゃないか。今度こそ隣のクラスに来た目的を果たし、又しても大慌てで自教室へ走る羽目になった。



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