※二年生設定

昼休みの教室は騒がしい。私のクラスの場合はある馬鹿のせいでいつだって騒がしいのだが、ここ最近はそれが顕著だ。バレー部全国大会出場おめでとう、という垂れ幕がでかでかと校舎に掛かってからというもの、騒がしかった馬鹿の周りに集まる人の多いこと。
「おーい、鬼の面相になってるぞ」
「うるさい、元からこんな顔です」
「まあまあ、木兎が人気者なのは去年からじゃん、そこに全国って箔が付いただけだろー」
「アンタもその箔のおかげで彼女出来たんでしょ、木葉くん」
「へへ、目付けてた子だったから超ラッキー、今ほどバレーやっててよかったって思うこともそうそうないぜ」
「うわ、引くわー」
クラスの人気者の木兎光太郎、その幼なじみである私は光太郎の周りに人が群がる様子を何年も遠くから見てきた。それは男子であったり女子であったり、少なくとも今のように女子ばっかりに囲まれる光景は見たことがない。あ、あれ三年生じゃん、わざわざ遠い二年のクラスに来るなんてよっぽど暇なんだなぁ。心にもやもやした感情をどこへぶつければいいのか分からず、ただポテチをひたすら食べ続けた。校内持ち込み禁止だろうが、光太郎がこのポテチを好きであろうが、私が光太郎の為に持ってきていようが知ったこっちゃない。光太郎はファンサービスで忙しいんだから。
「ニキビ増えんぞ〜」
「あんたには関係ないでしょ、彼女いるからって調子乗って説教しないでくんない?暇ならあの三年生とか蹴散らしてよ、見ててイライラするのよ」
「おいおい、こっちに八つ当たりすんなよ、今連れてきてやっから」
な?とウインクを一つ飛ばすと木葉は集団の群の中へ入っていった。根はいい奴なんだけど、なんであんなに軽そうなんだろう。いい奴なんだけど。
他称いい奴は光太郎を連れて来たと思うと、じゃあ俺彼女んとこ行ってくるわ〜とのんびりした足取りで教室を出て行った。
「名前〜、何か呼んだ?」
「何の用もないよ、ただ木葉が連れてきただけ。女の子達待ってるよ、行けば?」
「うーん、いいや!俺お前と話してる方が好きだし」
「…あっそ。」
こんな可愛げのない私より、他の女の子の方がよっぽどちやほやしてくれるでしょうに。ちょっぴり優越感に浸って、残り半分もないポテチの袋を渡す。
「あーっ、もう半分もねぇじゃん!お前食べすぎ!」
「光太郎がへらへらしてんのが悪いんだもーん」
「なんだよそれ!」
光太郎は俺のポテチ…と嘆きながら残りを貪っている。この表情をころころ変えて、楽しさも悲しみも全力な光太郎に好きって伝える日はきっとしばらくやって来ないけど、今のうちはこの幸せをかみしめたってバチは当たらないでしょう。



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