道宮先輩から頼まれ事を受けたのが十数分前のこと。

「ごめんね、男子バレー部から備品貸してくれないか、って頼まれちゃって…行ってきてもらえる?」
「はい!早速行ってきます!」
憧れの主将から話しかけられて浮かれたまま、私は走り出した。入学して数ヶ月、少しは部活に慣れたけれど先輩から頼まれるなんて滅多にない出来事に、俄然やる気がみなぎる。
隣の体育館へ全力疾走。確かに、浮かれてたことは事実だ。けれど、まさか体育館に到達する直前、しかも何もないところで転ぶなんて予期出来なかった。
派手な音を立てて地面に滑り込む。鈍い痛みと共に視界に映る、朱。それが自分の血だと自覚すると同時に、鈍い痛みがより現実的なものとなって追い詰める。痛みと恥ずかしさでうずくまっていると、上から響くような声が降ってきた。
「うおぉ、派手に転んだなー!大丈夫か!?」
四字熟語がプリントされたTシャツを身に纏っていて、膝にはサポーターをしているからきっとバレー部員なんだろう。ただでさえ恥ずかしいのに、そんなに大きな声で話しかけないでほしい。
「あの、この備品を男子バレー部に渡すようにって頼まれて、」
「そんなことよりケガ!立てるか?ほら」
左手に熱、そしてふわりと宙に浮く感覚。支えられて立ってみると、思った以上に距離が近付いた。
顔が、近い。あまり男子と関わることのない私にとってはそれだけで緊張してしまって、顔が熱くなってしまった。あれ、でもこの人もさっきより顔が赤くなってるような。
「あの、ありがとうございます…」
「……おう」
俺、備品置いてくるからちょっと待ってろ。そういい残して体育館へ引き返していった、名も知らない人。その後ろ姿に見とれてしまって、痛みなんてすでに意識から飛んでいってしまった。





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