テスト初日、いつも通り手応えは学年平均の中の下ってところで、きっと返却された時、人に見られないようにこそこそ点数を確認するくらいの出来、なんだろう。中学生の時からずっと同じ過ちを繰り返しているけど、どうやってもテスト前にテスト勉強は捗らないのだ。普段からやる習慣のない者は結局大してやらない。はぁ、と一度だけ溜め息をつくと、周りがふわっと白く濁った。冬の冷たい空気を感じながら息を吐く瞬間が、私は結構好きだったりする。その時には既に今日のテストのことは頭から抜け落ちていて、帰ったらケーキを食べようかなぁなんて考えていると、後ろから自転車が通り過ぎた。正確には、通り過ぎようとして横で速度を落としたのだが。
「ん、」
「あれっ、二口」
「何おまえ、付けてきたの?ストーカー?今時流行らないからやめとけよ」
「いやいやおかしいよね、それこっちの台詞だし。私も帰り道こっちなの!」
「まじかよ、知らなかった」
「運動部と帰宅部だもの、そりゃあ被らないよ」
そもそも自転車通学なんて知らなかった。いいなぁ自転車、私の家には自転車がなかった。実のところ、それを理由にしているだけで本当は自転車に乗れないのだ。高校生にもなって乗れないなんて、絶対馬鹿にされる。特にこの目の前にいる二口はこれ幸いとそのネタで一日を持ち切ること請け合いだ。そんなの絶対にイヤ。悟られないようにしなくては。
「そういやテストどうだった?」
「中の下って感じかな」
「お前帰宅部なんだからもっと勉強しろよ〜」
「帰宅部だから時間の使い方が下手なの、そういう二口はどうなのよ」
「俺も中の下〜」
「…嘘だ、二口成績良いの知ってるもん。毎回学年30位以内には入ってるでしょ」
「何で把握してんのお前、さてはやっぱりストーカー」
「違うから!」
いつのまにか二口は自転車から降りていた、さっきまで私のペースに合わせて漕いでいたはずなのに。こういうことを知らない間にやってのけるから二口は人気があるんだろう。あくまでウチの高校だけの話だけれど、友達の殆どは一度は二口を好きになって、でも諦めて結局別の男子と付き合っている。私も嫌いではないけれど、こうして悪態をついてしまうから二口からしたら女子の枠に入ってないんだろうな。
二口ととるに足らない会話を続けているうちに、いつも曲がる交差点までたどり着いた。なんだ、もう着いちゃったの。残念がる自分がいることにびっくりして、何となく素直に認められないでいた。
「私ここで曲がるけど、二口は?」
「俺はまだ真っ直ぐ」
「そっか。じゃあ、また明日ね」
「おー、…いや、やっぱり曲がる」
「は?」
「送ってやるっつってんの。たとえお前だとしても、物好きが彷徨いてるかもしれないだろ」
「れっきとした女の子ですけど!バカ!ありがと!」
「ハイハイどういたしまして」
ばか、ばか二口。悪態をつきながら交差点を曲がる。二口はというとさっきから目を合わせてくれなくて、素っ気ない態度を取っている。でもぎりぎりまで二口と帰れることがなんだか楽しくて、にやにやしそうな口をマフラーで隠した。



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