私のタイプは年上でめちゃくちゃ甘やかしてくれて優しい人、って思っていたはずなのに。実際ときめきを感じるのは年下で、理想と現実の狭間に苦しめられている。それを友達の華ちゃんに伝えたら、アンタって凝り固まった理想持ち過ぎなのよと一喝された。華ちゃん、もし男だったら惚れてたよ、かっこいいです。
お昼休みに華ちゃんとポッキーをつまみながら世間話をしていると、ドアの向こうから慣れ親しんだ顔がのぞいていた。
「華さーん」
「あら、照島くん」
華ちゃんが所属していたバレー部の部長、照島くんは結構な頻度でうちのクラスにやってくる。華ちゃん以外の三年生は夏のうちに引退したというし、マネージャーということもあって頼り癖がついているのかもしれない。私はバレー部に関係のない人間だからと、二人とは違う方向に顔を向けながらポッキーを食べ続けた。
「あんたまだ提出してないの!?早く教員室行ってきなさい!」
「うへ、スミマセン…」
頼り癖というか、M嗜好があるのかもしれない。と失礼なことを考えていると、にゅっと視界に照島くんが入ってきた。
「名前さん、こんちは!」
「えっ、あ、こんにちは。びっくりした、さっきまで華ちゃんと話してたよね?」
「今日締切のプリント提出してないって言ったら怒られちゃったんすけど、今顧問に確認してきてあげるからって行ってくれたんで、俺は華さん待ち」
「…華ちゃんも損な性格だよね、良く言えば優しいんだけど」
二つ目のポッキーの袋を開けながら独り言のように言う。照島くんはというと悪びれもせず視線は私の手の中にあるお菓子に真っ直ぐ向けられていて、素直なところが可愛く思えてしまう。正直言わせて貰えば、私の生きてきた中で一度も関わったことのない人種だと思う。最初華ちゃんから紹介された時は恐怖で目も合わせられなかったというのに、慣れとは恐ろしい。
「照島くん、一本いる?」
「わ、まじっすか!いただきます!」
「うん、はいどうぞ」
手渡しという意味で差し出したポッキーは、何故か照島くんの手に渡ることなくそのまま口の中へ。唖然とした顔をしているはずの私と、さも当然のようにポッキーを満足げに咀嚼する照島くん。ばちっと目が合ったかと思うと、もう一本食べたいです!と元気な声が返ってきた。
損な性格をしているのは私の方かもしれないよ、華ちゃん。友達の後輩にときめきを覚えてしまうなんて、しかもどんどんのめり込んでしまいそうな予感があるだなんて。でも一方的にのめり込むのは悔しいから、次は袋ごと差し出してやった。そうすると照島くんは一瞬だけきょとんとした顔をして見せたあと、にやりと口を歪めてこう言ってみせた。
「あれ、あーんはもうしてくれないんすか?」
「…照島くんのバカ、ほんとバカ」
袋から一本取り出すと照島くんはまた嬉しそうに顔を綻ばせるもんだから、私の心臓は一層ぎゅっと締め付けられてしまうんだ。




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