承りました
「ハァ…ッ、ハ…ッ」
「待ちやがれェ!」
「絶対に逃すな!」
後ろを見れば大勢の刀を持った男達がいた。もう体力の限界は過ぎていて、足がガクガクと震える。やばいこのままだと連れて行かれる。頭の中で最悪の状態を思い浮かべ涙が出てきそうになるのをなんとか絶えた。今できることを考えるんだ。
「誰か!誰か助けて!!!」
叫びながら走るが、ここは裏路地。近くには誰も居そうにない。おまけに叫んだせいで酸欠になってますます苦しくなった。
「あっ!」
足元にあった石に気付かず躓いて転んだ。早く立ち上がらないと、と思うが疲れ切った体は言うことを聞かず、立ち上がることができなかった。どんどん男達と距離が縮まる。その時聞いたことのない男性の声が聞こえた。
「ご依頼承りました」
「え?」
男性は木刀で私を追っていた人達をいとも簡単に倒していく。この人すごく強い。でもどうして私を助けてくれるんだろう。というか依頼って何だろう。頭の中はハテナマークでいっぱいだ。「 誰なんだよお前!!」と男性と戦っていた人達の最後の1人が声を震わせて叫んだ。
「万事屋だよ」
男性は木刀を振り下ろして相手を気絶させた。男性は木刀を自分の腰に戻して「お客さん大丈夫ー?」と私に手を差し出した。
「あ……、ありがとうございます!あの…貴方は…」
「ん?オレはこういう者です」
男性は名刺を私に渡した。名刺には"万事屋"と書かれていてその横に"坂田 銀時"と書かれていた。
「坂田銀時…さん…素敵な名前ですね」
「……名前なんて褒められたことなかったわ。んで?お客さんの名前はなに?」
「名字名前です」
「いい名前だな」
坂田さんはフッと笑った。なんだか名前を褒められるというのは照れるものだ。自分の顔に熱が集まるのを感じた。あ、とふとさっき聞きたかったことを思い出しすぐに坂田さんに質問した。
「あの…それで依頼って?」
「さっきさ、名前サン"助けて"って言っただろ。依頼はソレ」
あの時の声を聞いてくれた人がいたのかという驚きとこの人を巻き込んでしまっていいのかという戸惑いが混じる。
「……まァワケありだろ?詳しい話は中で聞くから」
「それと」と坂田さんは続けて「お互い名前を褒め合った仲だし、下の名前で呼んでくれよ」と私を見る。呼ばれるの待ちだなと分かり、クスリと笑ってしまった。
「銀時さん」
「はーい」
銀時さんは私の腕を優しく掴んで、「行くぞ」と引っ張ってくれた。そのあと銀時さんは「呼び捨てでもいいか?」と言ってきたので「勿論」と返した。
20170401
prev|next
[ 戻る ]