残酷な真実
「何言ってるネ!名前はもう万事屋で預かってるアル!」
「神楽ちゃん落ち着いて!」
神楽ちゃんが土方さんの言葉に立ち上がって反論をした。神楽ちゃんはそのまま土方さんに向かって行きそうな勢いで、新八君は思わず神楽ちゃんの両腕を掴み抑えていた。チラリと銀時さんを見ると何かを考えているようで、私の視線に気づかなかった。土方さんは1つため息をついて、「おい、総悟」と沖田さんに声をかけた。
「ヘイヘイ……おいチャイナ、メガネ。こっからはお前らにはちと刺激が強いんでさァ」
「ハ?何するネ!嫌ヨ!名前と一緒に居たいアル!」
神楽ちゃんはバタバタと暴れてだした。私が「神楽ちゃん……」と小さく呟いた言葉を銀時さんは聞こえたみたいで、「新八、頼む」と言った。新八君もこくりと頷いて「神楽ちゃん行こう」と言って沖田さんと神楽ちゃんと一緒に部屋を出た。出る時に神楽ちゃんが心配そうにこっちを見たので安心させるように「あとでまた話そうね」と言って笑った。
「…なんとなく分かってます。土方さん、ありがとうございます」
「アイツらに見せるにはまだ、な」
空気が重くなる。そんな時、銀時さんが「ちょっとちょっとー、銀さん仲間外れにされてるんだけど」と私の肩を抱いて自分の胸の中に入れた。
「ぎ、銀時さん!?」
「名前、オレも一緒に見るからな」
銀時さんは私を真っ直ぐに見て言った。銀時さんは不思議だ。たった一言で私をこんなにも温かくしてくれる、落ち着かせてくれる。銀時さんからほのかに香る甘い匂いに安心して、その匂いをかぎながら一度大きく深呼吸した。
「覚悟して見ろよ」
土方さんは何枚かの紙を私に渡した。1枚目の白紙の紙をめくるとそこには、液体の中に浮かぶ青い目がうつる写真があった。1つや2つではないだろう恐らく100近くある。頭の中がぐるぐると回る。次のページを見ると、何本もの腕や爪、髪の毛、透明なケースに入れられた血液があった。それを見ている間も頭の中がぐるぐると回っていて、どんどん気持ち悪くなる。
「………ッぁ…ゥ」
「もういいよこの資料は。返すわ」
「待って、銀時さん……ちゃんと最後まで見たい」
次のページにも写真は貼られていた。気持ち悪くなりながらも見ていると、見たことがあるナニカが目に映った。
「え…?この指輪………」
写真には切り取られた手が映っていて、その指には以前私の父が母にプレゼントした指輪が着けられていた。全身に鳥肌が立ち吐き気が襲ってきて、思わず吐きそうになる。サァーと血液がどんどん下がっていく。鏡を見ていないから分からないが恐らく顔が真っ青になっているだろう。力が入らなくなって、銀時さんにもたれかかってしまった。
「名前」
「それ……私の母だと…ッ、おもい…」
「もう言わなくていい」
銀時さんは最後まで私の言葉を言わせないで、私を自分の胸の中に収めた。それに安心して思わず泣きそうになる。土方さんは「聞くか?」と優しく聞いてきた。これは絶対に知らなくちゃいけないんだ。聞かなくちゃいけないんだ。
「聞かせてください」
「……強ェな」
土方さんは「悪ィ、やっぱ煙草吸ってもいいか?」と聞いてきたので頷く。土方さんは懐から煙草を取り出して、火をつけた。
「優療族ってのは肉体の価値が凄くてな、闇売買で宇宙だけじゃなく地球でも取引されている。お前らの特徴である青い目は勿論、血や髪、腕やら足やら爪にも値段がつく。それは知っていたか?」
「はい……母が教えてくれたので」
「そもそも今じゃ数も少ねェからな。値段もどんどん上がってんだ。それでそこに目をつけたのが宇宙海賊の"新羅"だ」
「新羅…?」
「新羅ってのは最近できた宇宙海賊団だが、優療族の肉体を売り捌いた金で今じゃ春雨に次ぐ勢いのある海賊団にまでなっている。それに…最近じゃ優療族を使って人体実験を始めて、不死身の兵隊を作ろうとしているという噂まである」
「……そんな…海賊団の為なんかに……私の母は…」
どうして私利私欲のために人を殺せるのだろうか。その思考が気持ち悪い。土方さんは口から紫煙を燻らせた。
「大まかな話は以上だ。さっきお前らを襲ってきたのは新羅の下っ端連中だろう。あいつらはお前を欲しがっている。」
20170430
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