証明と謝罪
ガブリと自分の手に噛み付いて、歯にグッと力を入れた。傷口がズキズキと痛み、熱くなる。痛みに思わず顔を顰めてしまった。傷口からダラダラと血が流れる。銀時さんに近付いて、追いかけられている時に怪我をしていた頬に触れた。
「銀時さん、少し我慢していて下さいね」
私は自分の血を指の腹で掬い、銀時さんの傷口に自分の血を被せた。その瞬間、私の血は銀時さんの傷口を覆うように変化した。血は銀時さんの傷口の中に入り、傷口は何事もなかったかのように元に戻った。
「私の血は一体化の能力があるんです。今のは銀時さんの切れていた肌に一体化したんです。これが優療族の"治癒力"です」
「………」
副長さんがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。沖田さんも驚きながらも「決まりでさァ」と淡々と言った。銀時さんと新八君も驚いたようで目を丸くしていた。
「名前ー!!!」
「わッ!」
神楽ちゃんは私に物凄い勢いで抱きついてきたので「どうしたの?」と聞くと「名前が何だか悲しそうだったアル」と私を抱きしめながら言った。その言葉に嬉しくなって「大丈夫だよ」と言いながらぽんぽんと背中を撫でた。神楽ちゃんは私をよく見ていてくれて、気持ちを察して私を抱きしめてくれる優しい子だ。
「名前さん……痛くないんですか?」
「うーん、少しだけ痛いかな」
新八君の言葉に苦笑いしながら答えると、沖田さんが「痛い?優療族は治癒力を使う際痛みも傷も伴わないって調べでさァ」と言ったので「私は地球人と優療族のハーフなので、痛みも傷も多少あるんです」と答えると、沖田さんは目を丸くして「マジでか」と小さく呟いた。
「傷、残るのか?」
銀時さんが心配そうに言ってきたので「心配しすぎですよ」と安心させるように返した。それでも銀時さんは心配していたのでどうしようと困っていると、新八君が懐から絆創膏を取り出して私の傷口に貼ってくれた。
「こんなのただの気休めにしかならないと思いますけど…」
「ありがとう!とっても嬉しいよ」
嬉しくなって新八君の頭を撫でた。副長さんが「すまねェ…お前のことをしっかり聞かずにこんなことさせちまって」と頭を下げたので慌てて「大丈夫ですから!」と言うが、それでもおさまらないのか「治療させてくれ!」ともっと深く頭を下げてきた。
「私はこの絆創膏で十分ですから頭を上げて下さい」
「そうだぞ土方ァ、もっと深く頭を下げろよ」
「お前は黙ってろ!」
沖田さんの言葉に反論し、副長さんはゆっくりと頭を上げて「本当にすまなかった」ともう一度謝った。「気にしすぎです」と思わず笑ってしまった。
「名前が優療族ってのは証明されたんじゃねェの?」
銀時さんは副長さんや沖田さんを見ながら話した。すると沖田さんが「優療族ってのは上からの命令で真選組の保護対象なんでさァ」と言った。ドキリと心臓が音を立てた。
「そういうことだ。コイツは真選組で預かる」
副長さんの言葉をなんだか重く感じて、新八君に貰った絆創膏に触った。
20170408
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