直後の直後の話

 

「ねぇ太一、何食べたい?」

 お風呂からあがり、タオルで髪の毛を乾かしてもらっている間にそう聞いてきた亮。
 その言葉に、ぴくんと体が揺れる。

「……何が、あんの?」
「ん? 何がって、何でもあるよ。今は携帯からでも予約出来るし。どれにする?」

 よし、もう乾いたよ。とちゅっと後頭部にキスをされ、そのむず痒さに、ん。サンキュ。と呟き、床に放っていた携帯を掴んだ亮がそう言いながらデリバリー専門店のサイトを開いては、どれにする? と見つめてくる。
 それに、ごくっ。と唾を飲んでは、恐る恐る携帯画面を覗き込んだ。

「弁当、ピザ、ラーメン、丼もの、あ、寿司とかも良いよね」

 一緒に画面を覗き、そう笑う亮の少しだけまだ水気を含んだ髪の毛が目に入る。
 濡れているせいかいつもよりくすんだ色味の髪の毛がなんだか可愛くて、横に並ぶ亮の腰にぎゅっと腕を巻き付けては、

「……俺、実はこういう、出前とか初めてなんだよね」

 と呟いた。

「えっ、まじ?」
「ん。母さんと暮らしてた時も貧乏だったし、外食すらしたことなかったから。だから、外食デビューもお前とが初めてなんだよな」

 そう言いながらぐりぐりと頭を亮の腕に押し付け、

「だから、なんかちょっと楽しみってか、ワクワクしてる。注文来たら俺が受けとるからな」

 なんて顔を覗き込みへへっと笑えば何故か真顔で見下ろされ、それに、へ? と呆けたその瞬間、思いきり抱き締められ、ボキッと背骨が鳴る音を体内で聞いた。


「いっっってぇぇぇ! おま、なにすんだ急に! 殺す気か!」
「殺しにかかってんのは太一の方!! なにそれめちゃくちゃ可愛いかよ!!」

 ギャンッと犬が吠えるような声量で叫び、またもぎゅうぅ、と抱き締めてくる亮に、まじで、まじで死ぬ。俺とお前の体格差考えろばか! と叫びながらぺしぺしと腕を叩いたが、なぜかよく分からない所でいつも興奮して馬鹿になっている亮を見るのは好きなので、堪らず吹き出してしまった。



「はぁ〜〜、可愛い。可愛い。大好き」
「ふはっ、いて、いてて、ちょまじで死ぬから、やめ、」
「あー好き! もっかいえっちしたい!」

 そうぐりぐりと肩に頭を押し付けてくる亮がぼそりと呟き、その言葉に、元気かよお前。と笑いつつ、

「ん。いーぞ。飯食ったらもっかいするか」

 なんて、俺もまだまだ若いからな。と笑えば、やはりまたしても息が止まりそうなほど抱きすくめられてしまい、

「っ、だから、いてぇんだよこのばか!!」

 と叫びつつ、思いっきり口を開けて笑ったのだった。



【 数十分後、先ほど使い捨てたコンドームが廊下脇に散乱しているのを配達員に見られ、ドアを閉めたと同時に亮をぶん殴ったのは言うまでもないだろう 】










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