ヒート話 4※
チカチカと火花が目の前で弾け、快感が全身を走り抜ける。
だがそれと同時にようやく満たされた腹の奥が気持ち良いと幸せに鳴き、ノアはシュナの陰茎を深く深く咥え込んだ蕾を収縮させ、中出しの気持ち良さにまたしても精液をぱたた、とシーツに飛び散らせた。
シュナの為だけの、ノアの奥。そこに一滴も溢さぬようにとシュナは尚も腰を深く押し付けたまま、小さく息を乱している。
それはまるで獣の交尾のような体勢で、そして荒々しく注ぎ込まれ続けるシュナの精液がヒートの熱をその瞬間だけ和らげ、だが快楽は絶えずとぐろを巻いて自身を昂らせていて、ノアはひくひくと全身を震わせながら甘い吐息を溢した。
「……ノア、大丈夫か?」
暫くお互い動くことなく息だけをしていたが、不意に柔らかくシュナが囁いてくる声にノアはピクッと身を跳ねさせた。
それは穏やかで低く、とびきり甘くて。
労るよううなじや肩、肩甲骨に口付けを落としてくるシュナにノアは尚も快感にビクンッと震えつつ、へにゃりと笑った。
「んっ、ぁ、……きもち、です……」
未だ終わらぬ、シュナの射精。
目一杯に広がった蕾はシュナの先走りとノアの愛液でぬらぬらと縁を濡らし、だがぴったりと埋めつくされたシュナの陰茎を離さないと吸い付いている。
その硬い怒張が自身の奥の奥、大事な赤ちゃんを育てる為の場所にぐぷっと亀頭を潜り込ませながら精液で埋めつくそうとしている感覚にノアは苦しさもありながら恍惚とした表情を浮かべ、そんなノアを見てはシュナは汗ばんで肌に張り付くノアの髪の毛を梳いた。
「ノア、体勢変えて良いか……?」
「……っ、はい」
くたりと沈むノアを労りながらも、顔が見たい。とシュナが健気に呟く。
そんな可愛らしいシュナの言葉にノアは途端にきゅんきゅんと胸を疼かせ、へらりと笑顔を見せた。
それはだらしなく、鼻水をずびずび啜っている顔はお世辞にも綺麗とは言えないが、やはりシュナにとっては世界一可愛くて。
そんなノアのこめかみにキスをしたシュナがそれからノアの腕を取ったが、抜けぬよう深く自身の中に沈んだままのシュナの陰茎にノアが小さく苦しげに呻いたのが分かった。
「っ、ノア、ごめん」
「だい、じょうぶっ、ですから……」
精液はようやく止まったが、アルファ性のせいで膨らんだままの根元。
それがノアを苦しめていると知っているシュナは叱られた子犬のような態度でノアを見ては、それでも向かい合わせになって顔中にキスの雨を降らせてくる。
そんなシュナの可愛すぎる態度にノアは胸に込み上げる幸せに頬を染め、そしてシュナの体をぎゅっと抱いた。
汗が引き始めているのか、ひんやりとしたシュナの滑らかな肌。
その褐色の肌と均等の取れた体はやはりどきりとするほど格好良く、こんなにも魅力的な人が自分の番いだなんて。とノアは恍惚の表情を浮かべながら、ぴったりと密着させるよう足をシュナの腰に巻き付けた。
「あっん……ん、」
「っ、……愛してる、ノア」
ちゅ、ちゅ。と余すことなく顔中にキスをするシュナが優しく囁き、微笑む。
いつもは美しくも鋭い瞳がくたりと蕩け、可愛らしく犬歯を覗かせるシュナのその愛らしさにノアも冷めぬ熱に浮かされながらも、ふにゃりと微笑み返した。
「……シュナさん、愛してます」
「俺も愛してる」
優しく唇を重ね合わせ、はむはむと互いの唇を噛みながら、二人がクスクスと笑う。
それは穏やかで甘く、そしてノアは幸せそうな表情のまま、自身の腹にそろりと手を這わせた。
さすさすと腹を擦り、シュナが埋まったままの気持ち良さに小さく喘ぎながらも、とろんとした眼差しでシュナを見たノア。
「シュナさんとの赤ちゃんが欲しいです……」
そう呟いたノアの真っ赤な艶々の唇は綺麗な弧を描いていて、その表情の美しさと言われた台詞にシュナは目を見開き、だが同じよう、幸せそうな顔をした。
「……きっとお前に似て可愛いだろうな」
ノアの言葉に同調し頬を優しく撫で、慈しむよう鼻先をすりすりと擦り合わせるシュナ。
少し前まではオメガになる事に怯え、ましてや自分と番えないならオメガになんてなりたくなかった。だなんて泣いていたノアを想えば、こうして自身がオメガである事を受け入れ、あまつさえ自分との子どもが欲しいと呟くノアに、嬉しくない訳がなく。
……どうしようもなく愛しい。とシュナは瞳を甘くたゆませては細め、またしても鼻先を擦り合わせた。
その優しい仕草にノアがふふっと小さく声を上げて笑い、同じようにすりすりと鼻先を触れ合わせる。
「俺はシュナさんに似てて欲しいです」
だなんて言いながらシュナの襟足を撫でてるノアは、可愛らしくはにかんでいて。
だがその瞳はまたしても欲に濡れ潤み始めており、もうシュナの根元が戻り始めているのが寂しいと言わんばかりに、ノアが熱い吐息を溢した。
「……シュナ、さん……、」
ぽつりと名前を呼ぶノアの声はやはり熱にくぐもり甘く、たった一回の交わりでは到底ヒートは収まらないとノアがもじとじと腰を揺らし始めれば、それに自身の陰茎が刺激されたシュナもまた、瞳をギラつかせながらノアを見た。
それから二人はベッドの上で何度も何度も互いを求めあい、ノアはシュナが少しでも離れようとすれば泣き言を溢して嫌がり、決して自身の中から抜くことを許さなかった。
そんなノアにシュナもヒートがどれほど強い繋がりを求めるのか理解していて、ずっとノアを慰めるよう繋がったままにし、それは食事中でも、僅かな睡眠の時も変わらず、食事中はノアを膝の上に乗せて自身を埋めたままノアに食事を与え、眠る時も後ろからぴったりと抱き締めたまま抜かずに眠り、何度も何度も愛してると囁いては、愛を与え続けた。
──そうしてシュナがノアにひたすら快楽と安心と愛を献身的に捧げてから、早数日。
シュナの上で気持ち良さそうに腰を振り、それでも、もう無理。と気持ちよすぎて動けずへにゃりと倒れ込んだノアを抱きシュナが下から激しく突き上げ、何度目か知らぬ精液をノアの奥の奥に注ぎ終わった頃。
ようやく燃えるようなヒートが収まったのか、ノアはシュナの上でひくんひくんと淫らに、だが可愛らしく身を震わせながらも、はぁ……。と疲労とも安堵とも呼べるような大きな息を吐き出した。
「……ノア、収まったか?」
「っあ、ん、……はい、たぶん、も、だいじょうぶです……」
ノアの匂いが、いつもの甘く、だが爽やかな桃の香りに変わってきている事に気付いたシュナが、ゆるりと労るようノアの腰を撫でる。
その刺激に喘ぎながら、汗やら涙やら互いの精液やらでぐしょぐしょになったノアはそれでも変わらず、綺麗に微笑んだ。
「頑張ったな」
体力的にも精神的にも疲れるのはノアの方だと理解しているシュナが、よしよし。とノアの髪の毛を梳き、笑う。
そんなシュナも汗にまみれていて、だがそれが誰よりも格好良いとノアはシュナの首筋に顔を埋めては、優しいシュナの手の感触と大好きなシュナの強くて穏やかなアルファの匂いを、肺一杯吸い込んだ。
それから二人はしばらくじっとしていたが、ノアが完全に落ち着いたと確信したのか、シュナはノアを風呂に入れるべくブランケットでノアをくるんで抱きながら、着替えと清潔なタオルを持って小屋を出た。
数日ぶりに出た外は、もう大分春の陽気に溢れていて。
その空気は夜だというのに暖かく、新鮮な匂いをノアはめいっぱい吸い込んだ。
群れの穏やかな香りと、春の爽やかさ。
そして夜の静けさが身を浸し、シュナに抱き付いているノアは幸福ながらも全身が筋肉痛で悲鳴をあげているとシュナの首に睫毛を刺しながら、目を閉じた。
「眠いなら寝てて良い」
ノアがうとうととしているのを感じたのかそう囁いたシュナが、ノアの汗を掻いている髪の毛に、そっと甘く口付ける。
それはやはりどこまでも優しく献身的で、……こんなにも優しいアルファだって存在していると数年前の自分に言ってもきっと信じてくれないだろうな。だなんてノアはぼんやりと思いながらも、歩き出しつつノアを抱き締めたまま背中をトントンと撫でてくるシュナに、くたりと身を任せた。
シュナの体温や匂いはやはりとても穏やかで優しく、ノアはうっとりとした心地のまま、その撫であやす大きな掌に促されるよう、キラリと目の端を幸福な涙で湿らせながらも、幸せな夢に落ちるべく意識を手放した。
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