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オサムちゃん


今日はハロウィン。
お祭り大好きな四天宝寺は、朝からなんだか楽しげな雰囲気。

1時間目はオサムちゃんの授業だったっけ、と思いながら教科書を準備していると、チャイムがまだ鳴ってないのにオサムちゃんが教室に入ってきた。授業始まる前に来るなんて珍しいな。

「おー、ハロウィンやなー。トリート アンド トリート!」

トリック オア トリートやろ、両方トリートでどないすんねんオサムちゃん、と小石川君がツッコんで、クラスは笑いに包まれた。

「いやいや、あってるあってる。トリートが欲しいねん、お菓子欲しいねん。」

オサムちゃんは教卓をポンポン叩きながら、今オサムちゃんになんかくれた奴にはいいことあんでー、と笑った。

どうせコケシやろ、何回そのネタすんねん、もうあきたわ、いらん、とクラスのみんなが笑いながら口々に言うと、オサムちゃんは、ふっふっ、と不敵に笑った。

「それがコケシやないんやけどなー。ええもんやねんけどなー。」

もしかして、今回の通信簿いい成績つけてくれるんちゃう、いや、もしかしたら、こないだ見せびらかしとった高いチョコかも、と誰かが呟いたのを皮切りに、ドワッとみんなが教卓に集った。

「おおきに、おおきに。」

なんだかおもしろいから、私も作ってきたカボチャのミニタルトあげよ、と席を立った。

オサムちゃんは一人一人頭をぐしゃっと撫でて、お礼を言いながら嬉しそうに受けとっていた。

クラスの全員のお菓子が教卓に集まったところで、タイミングがよくチャイムが鳴った。

「よっしゃ、授業開始やなー。ほなええもんやるでー。」

え、今から授業なのにいいものくれるってどういうことだろうとオサムちゃんを見ると、オサムちゃんは教卓の中に隠し持っていた紙の束をバンと出した。

「ハロウィン特別テストやでー。嬉しいやろー?」

…いいものが、テスト?

数秒の沈黙の後、オサムちゃんのアホ、テストってなんやねん、大人って汚いと、みんなが口々に騒ぎ出した。まったくだよ、本当にもう。

でも、堪忍、堪忍って笑いながらオサムちゃんを見ていると、なんだか憎めない気持ちになってしまって、しょーがないなー、と笑った。

クラスのみんなも怒りながらも、オサムちゃんにしてやられたわー、と楽しそうに笑っていて、やっぱりオサムちゃんはみんなに愛されてるなーとほんわかした気持ちになった。


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