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小春ちゃん


寒いなー。今日で10月最後だもんね。手を軽くこすり合わせながら学校へ向かって歩いていると、前の方に小春ちゃんを見つけた。

「おはよう、小春ちゃん。」

「ん?ああ、伊織ちゃん。おはようさん。」

小春ちゃんは私にニコッと笑って挨拶すると、鞄から何かを取り出した。

「ちょうど会えてよかったわ。放課後にユウ君とやるハロウィン特別お笑いライヴの合わせで、学校着いたら休み時間中ずっとバタバタしとると思うから伊織ちゃんに渡せるか心配やったんよ。」

カボチャのきんとん、ちょっと洋風に作ってん、と言いながら小春ちゃんが差し出したのは、中が見える透明の袋を薄いオレンジの柔らかい和紙で包んで、ピンクのリボンで口を結んだものだった。リボンの端は綺麗にくるくる巻かれていて、和紙から透けて見える中のお菓子は、ジャック オ ランタンみたいな形をした可愛いカボチャのきんとんだった。相変わらず女子力高い!

「わあ、可愛い!くれるの?ありがとう。嬉しい。」

「ふふっ、ちゃんと渡せてよかったわー。」

「あ、私もお菓子あるよー。小春ちゃんのをもらった後だとちゃんとかすんじゃうけど、よかったらどうぞー。」

こんなことなら、せめてもっとラッピングくらいは力入れてがんばればよかったなー、なんて思いながら鞄から買ってきたラムネの袋を出して、その中から3個小春ちゃんの手に乗せた。

「わあ、もらってええん?おおきに。伊織ちゃんからもらえるなんて嬉しいわー。」

手作りのカボチャのお菓子(可愛いラッピング付き)をもらって、市販のラムネ(ラッピングなし)を渡すってどうなんだろう、と少し思ったけど、小春ちゃんが嬉しそうに受けとってくれたから、まあいっか。

小春ちゃんとのんびりお話しながら歩く学校への道は、さっきと違ってなんだかあったく感じた。


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