謙也君と鈍い恋
キラキラキラキラ
忍足君の髪が太陽に透けてキラキラしてる。
忍足君以外にも髪の明るい子はいるけど、誰より何より忍足君がキラキラして見えるのは、やっぱり私が忍足君を好きだからなんだろうな。
「なんや神崎、また謙也見とんの?」
忍足君をぼーっと見ていると後ろから白石君に話しかけられた。
「うん、見てた。キラキラしてるんだもん。」
「俺かてキラキラしとるで?」
言われてチラッと白石君を見ると、確かにキラキラしてた。髪も笑顔も。
でも私は顔を忍足君に戻して口を開いた。
「白石君もキラキラしてるけど、忍足君は特別なの。」
お熱いことで、と笑いながら私の髪に手を伸ばした。
「ついてんで、ゴミ。」
ああ、ありがとうね、と言おうとしたら、私の大好きな声に遮られた。
「し、白石!何してんねん教室ん中で!」
お、忍足君だ!
どうしよう、こんなに近くにいたことないから、それだけで緊張する。
「なんや謙也、俺が神崎の頭撫でとるようにでも見えたんか?」
見えたってか撫でとったやないか!と言う忍足君に、誤解だよと言いたかったけど、目の前に忍足君がいることに緊張してうまく言葉が出なかった。
白石君はそんな私を見て笑いをこらえていた。ひどい。
「髪についたゴミとっとっただけやで?てか、そもそも謙也が教室に走って入ってきたからゴミが舞って神崎の髪についたんやからな。」
「す、すまんな、神崎。」
「だ、大丈夫だよ。」
白石君なんてことを言うんだ!忍足君が申し訳なさそうな顔しちゃったじゃない!
ああ、でも忍足君に話しかけてもらえて嬉しい!、なんてことを考えていたら白石君がまた笑いをこらえていた。
なんなんだこの失礼な人は。
「あ、神崎こっちにもゴミついてんで。」
白石君は私の制服の衿元に手を伸ばした。
もう止めて、本当止めて下さい!
忍足君にゴミだらけって思われたらどうしてくれるんだ!
「し、白石ーっ!」
伸ばしていた手を忍足君に掴まれると、白石君はああ気のせいやったわと言ってあっさり手を引っ込めた。
「なんやねん、ほんまさっきからなんやねんお前は!」
白石君はまた笑いをこらえながら私と忍足君を見た。
「いや、俺、自分らの好きな奴知っとるから、もうおもろくておもろくて。」
そんでついからかってしまうんや〜、と白石君は言った。
「「え。」」
白石君はハモった私と忍足君の声にまた笑いをこらえていたけど、笑えないよ、笑えない!
「っ、神崎、好きな奴おるんか!?」
「忍足君、好きな子いるの!?」
「「え?」」
なんで忍足君が私の好きな人がいるかどうかにこんなに食いつくんだろうと思って忍足君を見ると、同じような表情をした忍足君と目があって、恥ずかしくなって慌てて目を逸らした。
「ぶっ、はは、あっはは。」
白石君はこらえられなくなったみたいで、いきなりお腹をかかえて笑いだした。
「ひー、息苦しいわーっ。」
「そんなに私がフラれそうなのがおかしいか!?」
「俺がフラれそうなんがそんなにおかしいんか!?」
「「え、フラれそうなの(ん)?」」
私と忍足君がハモると、白石君はさっきよりももっと激しく笑いだした。息が苦しそうだよ、白石君。
「あー、自分らほんまにおもろいなあ。」
もうちょいそのままでおってや〜、と言ってくる白石君の言葉はよく意味がわらなかったけど・・・
(白石君のおかげで、今日は忍足君とこんなに話せて嬉しい!)
(神崎とこんな話せるなんて、白石に感謝やな!)
(あー、ほんまなんでお互い気づかないんやろ)
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