銀さんと猫
川辺を歩いていると、静かに座禅を組んでいる銀さんを発見した。
「あ、銀さん、こんなとこで何して…、って本当に何してるのっ?」
銀さんに会えるなんて、今日はついてる、なんて思いながら近寄って、銀さんの姿を見て驚いた。
何これ、猫タワー?
なんで猫が銀さんに群がってるの?
なんで銀さん、猫が膝とか肩に乗ってるのに気にしてないんだろう、すごい。
というか、猫羨ましいよ!私も銀さんの膝に乗りたい!
「ん、伊織はんか。…むっ?」
銀さんは軽く閉じていた目を開いて私を見てから、自分に群がっている猫たちを見て、なんやこれ、と言った。
「え、銀さん気づいてなかったの?」
「ちょっと心を無にしとったからな。」
だからって、群がる猫に気づかないくらい集中するなんて、銀さん、すごいよ。何がすごいかうまく言えないけど、なんかすごいよ。
「銀さんおっきいから、安心したのかな。可愛いね。」
「せやな。」
かわええな、と言って銀さんは膝の上の猫を撫でた。
猫は気持ちよさそうに、銀さんの手に頭を擦り寄せていた。
なにこの甘え上手。
「…いいなぁ。」
「ん、伊織はんも撫でたいんか?」
「いや、私は撫でられたい方。」
「…ん?」
銀さんの不思議そうに傾けられた首を見て、自分の失言に気づいた。
「えっと、違うの!変な意味じゃなくてね、猫は銀さんの膝に乗っても怒られないし、甘え上手だから頭撫でてもらえるし、いいなって、」
ダメだ。言葉を重ねれば重ねるほど、墓穴が深くなっていく。
何を思ったか銀さんは、膝に乗っていた猫を膝からおろし、あぐらをかいた自分膝をポンポンと叩いた。
なんだろう?
「ん?来ぇへんの?」
「え、いいの?」
銀さんは、ん、と言って頷いた。
銀さんの言葉に甘えて、あぐらの中に入った。
銀さんの胸に、自分の背中をそっと預けると、銀さんは楽しそうにちょっと笑いながら、私の頭を撫でてくれた。
さっきまで銀さんの膝の上にいた猫が、にゃーと鳴いて私に擦り寄ってきたから、優しく撫でた。
さっきは妬いちゃってごめんね。あなたのおかげで、銀さんに頭撫でてもらえてるよ。
「あったかいなー。」
気温のことなのか、体温のことなのかわからなかったけど、私も頷いた。
「うん、すっごくあったかいね。」
もうしばらくだけ甘えちゃお、と銀さんの体温を感じながら、軽く目を閉じた。