short | ナノ


知念君と単純な子


「ねえねえ知念君、どうして知念君の髪の毛、前髪だけ白いの?」

知念君の髪の毛は男の子にしてはちょっと長めだけど、その長さだけではそこまで目立つって程ではない。

甲斐君とか平古場君の方が長いし、髪型で言ったら木手君の方が奇抜だし。

でも髪の色で言ったら、知念君が断トツで目立ってると思うんだ。

そこまで一気に言うと、知念君はため息をついた。

「この髪、実は・・・。」

「じ、実は?」

な、なんだろう。聞いたらいけないことだったんだろうか。

なかなか先を言わない知念君に、私は息をのんだ。

「・・・特に意味はないんさー。」

だ、騙された。

何かあるのかと思ったじゃん、という私の顔を見て、知念君は口の端をあげて笑った。

「はっ、やーは騙されやすすぎなんやっし。じゅんに単純、単純。」

知念君はいつもいつも私を騙しすぎだと思う。

ゴーヤは生で食べたらあんまり苦くないとか(塩で苦み抜きもしてないから涙が出るくらい苦かった!)、アカバナーを頭につけるのが最初ファッションだとか(今時小学生でもしないって平古場君に笑われた)。

その度にいつも騙されて、知念君に笑われてきた。

「知念君のばーか。もう知念君が話しかけても、返事しないんだから。」

こう言ったら少しは反省してくれるかな、と思いながら、ふんっとそっぽを向くと、知念君は別段取り乱した風もなく口を開いた。

「なら、わん、やーにはもう話しかないさー。」

やーに話しかけるの好きやったんやしが、しょうがないねー、やーももうわんに話しかけんのやめれーと言う知念君に、私の方が取り乱した。

「ちょ、ちょっと待ってよ、知念君!話しかけないの?もう話さないの?」

「んー。」

「やだよ、やだよ!騙してもいいから話しかけてよ。」

知念君と話せないなんて、そんなの寂しいよ、と思いながら知念君の硬いお腹をポカポカ叩くと、上から楽しそうな笑い声が降ってきた。

「わんと話せなかったらさびさんや?」

「うん、寂しい。」

「やーはじゅんに単純さー。わんがやーに話しかけなくなるなんて、あるわけないやっし。」

知念君は笑ってたけど、私はあんまり笑えなかった。

知念君、私のこと単純単純、ってよく言うけど、好きなタイプは一筋縄ではいかない人なんだって。平古場君が前言ってた。

一筋縄ではいかない人って・・・、単純とは真逆じゃん!

「あい、どうしたんばぁ?」

いつもだったら知念君が笑ったら機嫌を治して笑う私が下を向いたままだったからか、知念君が少し心配したような声をだした。

「単純じゃないもん。一筋縄じゃいかない人になるんだから。」

私がちょっとムスッとした顔でぼやくと、知念君は小さく吹き出した。

「はは、凛にでも聞いたんばぁ?」

ムスッとしたまま頷くと、知念君は珍しく頭を優しく撫でてくれた。

いつもは痛いくらいにグリグリするのに、本当に珍しい。

「わんは単純なやーのことが好きなんやっし。やーに変わって欲しいわけやあらん。」

「え、好き?」

びっくりして知念君を見上げると、ん、と小さく頷いた。

「わ、私も!私も知念君好き。」

知念君は、そんなの知ってるやっし、と笑った。

知ってたなら騙したりいじわるなんてしないでよとちょっと思ったけど、知念君が笑ってくれたことと、私のこと好きって言ってくれたことが嬉しくて幸せで笑顔になってしまった私は、やっぱり単純なんだろうなと思った。





逆に」:好きなタイプと真逆のヒロインを書いてみよう企画

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