財前君とネット
「あ、また新曲だ!」
最近チェックするのが日課になっている創作音楽サイトに足を運ぶと、また新しい曲がアップされててテンションがあがった。
ギターとかピアノとかいろんな音がしてるけど、別に本人がひいてるわけじゃなくて、パソコンで入力して作ってるんだって。
初めてコメント送ったとき、そんなこと知らなかったから、ギターもピアノもドラムもブラスもできるなんてすごいですね!って言って、いや、入力しとるだけやからって言われたのも、仲良くなった今ではいい思い出。(ほんとは今でも思い出すと恥ずかしいけどね!)
今回の新曲はどんなのかな、とワクワクしながら聞くと、すごく優しいのに泣きたくなるような、切なめなバラードだった。
今まではロックが多かったからなんか珍しいけど、ぜんざいさん、バラードもいいな。
ひとしきり余韻にひたってから、思わずこぼれていた涙を拭いて、もう一度聴こうとマウスを動かすと、スカイプに通話がきた。
あ、ぜんざいさんだ。なんてタイムリー!
「今通話大丈夫か?」
かけてから聞かれても、と笑いながら、大丈夫だよ、と言うと、さよかー、と言われた。
「ちょうど今、ぜんざいさんの新曲聴いてたんだよ!バラード珍しいね。なんかちょっと泣いちゃった。」
「おん、そらよかった。伊織泣かそう思って作った曲やからな。」
なにそれ、と笑うと、そのまんまやアホって言われた。
ぜんざいさん、仲よくなってきたんだけど、やっぱり時々読めないな、なんて思ってさらに笑ってしまった。
「こないだスカイプしたときなんや様子おかしかったから、落ち込んどんのかなって思ってん。」
驚いた。確かにあの時は落ち込んでたんだけど、気づかれてないと思ってたのに。
「せやけど、自分そういうん隠すから、ほな俺の曲で泣かしたろって思ったんや。泣いたら少しはすっきりするやろ。せやから泣け。盛大に泣けや。」
そっか、私を泣かして元気づけるために、作ってくれたんだ。
落ち込んでたことが小さく思えるくらい、なんだかすっごく嬉しかった。
泣きそうになるのを抑えながら、ありがとう、と言うと、一言、おん、と答えてくれた。
それがなんだか、いつもよりちょっとだけ優しい声音で、またちょっと泣きそうになってしまった。