銀さんの背中
「銀さんっ!」
「む。伊織はんか。いきなり後ろから背中に飛びついたらびっくりしてまうで。」
銀さんを見つけて、後ろから銀さんの背中に飛びつくと、銀さんはそう言ってから首だけで軽く振り返った。
だって銀さんの背中を見つけたら、つい飛びついちゃうんだもん。きっと磁石的な何かの力が働いてるから仕方ないんだよ、と言うと銀さんは、ほんま伊織はんはしゃーない子やなー、と言って笑った。
銀さんの背中は広くて、たくましくて、くっついていると、すごく落ち着く。
筋肉で硬いけど、そのゴツゴツしているところも大好き。
だから私は銀さんの大きな背中を見つけると、いつも飛びついてしまうんだ。
「銀さんの背中、本当落ち着く。癒されるー。」
「こんなゴツい男に抱き着いても癒されんやろ。」
「癒されるよ!α波でてるよ、きっと!」
銀さんは、なんや照れるな、と言って少し笑った。
「銀さん、もしかして、後ろから飛びつかれるの、いや?」
「なんでそう思うんや?」
「だって、えっとね、銀さん、私が飛びつくと、ちょっと困ったように笑ってる気がするから。」
嫌って言われたら、もう飛びつくの我慢、…できるかな、うん努力はしよう。
「嫌やないで。」
「本当ー?」
銀さん優しいから嘘ついてるんじゃないの、という目で見ると、銀さんは、ははっ、と笑ってから続けた。
「せやけど、伊織はんがわしの背中にひっついとったら、伊織はんの顔が見られへんから、ちょっと寂しいな。」
「っ!」
銀さんの言葉に照れた私は、銀さんの背中にひっついたまま銀さんの首の後ろにおでこを押し付けて銀さんから見えないようにした。
「あはは、もっと顔隠れてもたわ。」
銀さんはそう言いながらも振り払おうとはしなくて、やっぱり優しいな、と嬉しくなった。