short | ナノ


神尾君とコンビニ


夜、部屋でごろごろとしていたら、なんでかわかんないけど、急にマシュマロが食べたくなった。

マシュマロはいい。ココアに入れてとかしてもいいし、火であぶってチョコと一緒にクッキー2枚で挟むのもいいし、もちろんそのまま食べても美味しいし。

とにかく、明日まで待つなんて無理、と思った私は、近所のコンビニまで行くことにした。ラフなワンピースの部屋着だけど、こんな時間だし、誰も会わないよね。

「おっ、神崎じゃん!」

「かっ、かか、神尾、君!」

神尾君は、ははっ、どもりすぎだって、と言って笑った。

なんで神尾君がこんなとこにいるんだ。ああ、私のばかばかばか!神尾君と会うってわかってたらこんなラフな格好で外出なかったのに!

「こんな時間に何やってんだよ?」

「えっと、マシュマロ買いに。」

「くっ、神崎、ほんとマシュマロ好きだよなー!」

いや、マシュマロよりも神尾君の方が大好きです、なんてばかなことを考えながら、だって美味しいじゃん、と答えた。

あれ、というか、なんで私がマシュマロ好きって知ってたんだろう?そんなマシュマロ、マシュマロ言ってたかな?

「神尾君は?」

今日は確か部活ないはずだけど、なんでラケバ持ってるんだろう。

「俺は深司たちとストテニ行ってきたんだ。」

「ああ、だからラケバ持ってたんだ。部活ない日までテニスなんて、本当に神尾君テニス好きだね!」

「おう、好きだぜ!」

神尾君の、好きだぜ!にちょっとときめいてしまったよ!

「ん、なんで部活ないの知ってんだ?」

「え?えっと、」

「ん?」

いつも神尾君がテニスをするところを遠くの教室の窓から見ているから、今日は部活休みって知ってました、なんて言えるわけもなく、なんとなく!と言ったら、神尾君に笑われた。

「くっ、なんとなくってなんだよ、なんとなくって。」

「なんとなくはなんとなくなの!」

神尾君は話しながら、私に着いてコンビニに入って来た。

買うものがあったのかなと思ったけど、私がマシュマロを買ってコンビニを出ようとしたら、何も買ってないのに一緒にコンビニから出てきたから、別に買うものはなかったのかも。

「神崎家どっちだっけ?」

「え、こっちだけど…?」

私が家の方向を指差すと、よしっ、じゃあ行こうぜ、と神尾君が歩き出した。

え、あれ?もしかして送ってくれようとしてる?

「何してんだよ、神崎。早く来いよ。家帰るんだろ?」

いや、でも送ってもらうのは悪いよ、と思って立ち止まったまま神尾君を見てそう言うと、神尾君は、へ?と言って少し首を傾げた。

うわ、どうしよう。家に送ってくれようとしてるとか、勘違いだったのかな。恥ずかしい!なんて恥ずかしいやつなんだ私。

「もう夜遅いんだから、送るのくらい当たり前だろ?んなことくらいで遠慮すんなって。」

勘違いじゃなかったけど、やっぱりなんか恥ずかしい。というか、神尾君を見るのが恥ずかしい!

「ほら、帰るぞー。」

「う、うん。」

神尾君の言うことに、いちいち恥ずかしくなってしまうけど。

でも、こういうことを恥ずかしがらずに、まるで本当に当たり前みたいに言ってしまうところも、神尾君の魅力の一つだよな、なんて思った。

帰り道の途中、ありがとうと言うと、神尾君は、どういたしましてー!と
言ってニカッと笑った。


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