銀さんともっと電話
銀さんと電話の続き
あの恥ずかしい電話事件(事件だよ、大事件だよ私にとっては!)の次の日、私は心臓をバクバクさせながら教室に入った。
銀さん、昨日は優しく笑って許してくれたけど、本当は怒ってたらどうしよう!
というか、銀さん、って呼んでいいって言ってくれたけど、本当にいいのかな?
「あ、神崎はん、おはようさん。」
「おっ、はよう!ぎ、石、ぎん、石田君!」
銀さん、なんて呼んで、馴れ馴れしくないかな、って考えてるときに銀さんに話しかけられて、変な呼び方をしてしまった。
私のアホー!こんな変などもり方をするくらいなら、勇気を出して銀さんって呼べばよかったよ。
「はは、神崎はんは元気やなぁ。」
銀さんはそんな私の挙動不審な挨拶にも柔らかい笑顔で返してくれた。
今、たった今、銀さんの笑顔を見て、すっごく元気になりました!
「あの、昨日はごめんね。変な時間に間違い電話かけちゃって。」
「気にせんでええねん。朝から神崎はんと話せて嬉しかったんやから。」
「ぐっ。」
銀さんの言葉と柔らかい表情に胸をいぬかれて胸を押さえると、銀さんは、神崎はん、どないしたんや、と心配そうに少し焦った。
焦る銀さんも素敵、と思いながら、銀さんに向かって片手を上げて大丈夫と示し、もう片手で胸を押さえた。
銀さんの私をドキドキさせるパターンは108式だよ!破壊力抜群!
「ご、めんね、石田君。ちょっと心臓がびっくりしちゃって。もう大丈夫だから。」
なんとか平常心に戻してそう言うと、銀さんは、ほんならよかったわ、と言って微笑んだ後に、ちょっと考えるような顔をした。
「石田君、どうかしたの?」
「神崎はん、もう銀さんって呼んでくれへんの?」
そう言いながら銀さんは首を傾けた。(そんな銀さんにまた胸をいぬかれたよ!)
「呼んで、いいの?」
「わしは呼んで欲しいんやけど、アカン?」
ちょっと眉を下げて微笑む銀さんに、アカンくない、アカンくないよ銀さん!と方言まじりの変な言葉を発すると、よかった、と嬉しそうに微笑んでくれた。
「もう、本当、銀さんの私をドキドキさせるパターンは108式だよ。」
ちょっと恥ずかしくなって、手で顔を隠しながら言うと、銀さんは、なんやねん、それは、って笑った。
「銀さんのことは銀さんって呼ぶから、銀さんも、えっと、銀さんも私のこと、」
「伊織はん、って呼んでええか?」
「Sss...sure!」
恥ずかしいのと嬉しいのがもういっぱいいっぱいになって、どもりながらの英語で、もちろん!、と叫んで銀さんから走って逃げた。
後ろから、はは、伊織はん英語の発音ええなぁ、なんて、また私の名前を呼んでいる銀さんの声が聞こえて、顔がにやけてしまった。