short | ナノ


小春ちゃんとツクシ


「こーはるちゃん!」

「わっ、伊織ちゃん、びっくりしたわァ。」

お昼休みになると同時に伊織ちゃんが突進してきた。

えっへへ、これ渡したくて、と差し出してきたのは、弁当箱みたいやった。

「これ、くれるん?」

「うん、中見て見て!」

こないだ伊織ちゃんがくれたお弁当が、小春ちゃん梅干し好きだって言ってたから、と梅干しだけが敷き詰められたものだっただけに(もちろん白米のおにぎりを買って全部食べたで)、なんだか身構えてしまう。

ちなみに白米のおにぎりを買っていたアタシを見て、何を思ったか、次は白米だけが敷き詰められたお弁当をくれた。(それはふりかけを買って完食した)

「あれ?」

ドキドキ、というか少しヒヤヒヤしながらお弁当のふたを開けると、いい意味で普通のお弁当で驚いた。

ちゃんとお米とおかずが入っとる!

すごい!すごい進歩やんか!と伊織ちゃんを見た。

「小春ちゃんが、ご飯とおかずは両方入ってこそのもんなんやでって言ってたから、両方入れてみたんだけど、大丈夫かな?あとね、このおかず、ツクシ入れたの。ツクシの卵とじと佃煮。小春ちゃん、この間、なんか春が来たーって実感するものあらへんかなーって言ってたから。」

春が来たって実感した?と笑いながら首をかしげる伊織ちゃんの頭に、ポンと手を置いた。

「めっちゃ実感しとるわ。おおきにな、伊織ちゃん。」

パアァアと、花が咲いたように笑う嬉しそうな伊織ちゃんが可愛くて、アタシも笑った。

いつでも全力で、いつも頑張ってて。

ちょっとズレたことをしてくる時もあるけど、そんなとこもかわええなって思ってまうんやから、ほんま、伊織ちゃんにはかなわんな。



prev next

[ top ]