一氏君と1ヶ月
今日から1ヶ月、両親が旅行に行ってしまうので、家で一人留守番だ。
私も行きたかったけど、そんなに学校休めないもんね、なんて思いながら夕食の準備をしていると玄関のベルがなった。
「はーい。って、あれ、ユウジ君?」
お隣りに住んでいるユウジ君はすぐに扉を開けた私に、無用心やなアホと言ってからズカズカと家に入ってきた。
「伊織のオカンから、ユウジ君悪いんだけど、私たち1ヶ月家を離れるからその間伊織のこと気にかけてやってくれるかしら?、って言われてんねん。」
ユウジ君が、私のお母さんの完璧な物まねで言うから、笑ってしまった。
相変わらず似てるねー、と言った私に、当たり前や、と返したユウジ君は少し得意げだった。
「ということで、これから1ヶ月ここに泊まんでー。」
え、なんで?という顔でユウジ君を見ると、ユウジ君は当然、というような顔で言った。
「やって、伊織昔から夜一人になると泣いて寝られへんやないか。」
「なっ、そんな昔のことだもん!」
ほー、なら俺帰ってもええんやな、と帰ろうとするユウジ君の服をとっさに掴むと、ユウジ君はニヤッとした。
「初めから素直になれや。」
「別に怖くないけど、せっかく来たんだからご飯食べたら?って思っただけだもん。」
恥ずかしさからちょっとふてくされた私に、ユウジ君は、ほなそういうことにしといたるわ、と笑った。
私の作った夕ご飯を二人で食べながら、1ヶ月か、長いか短いかわかんないけど、ユウジ君とずっと一緒にいられるならきっとあっという間だろうな、なんて、そんなことを思った。
「お、うまいな。伊織はええ嫁さんなるで。」
「な、ななな、お嫁さん!?」
「くっ、焦りすぎやアホ。(かわええなー。)」