金ちゃんとタコ焼き屋さん
あと1時間くらいしたらそろそろ来る頃かなー、なんて思いながら入口を見ていると、ガラッと扉が開いた。
「伊織ー!来たで!」
「金ちゃん、今日は早いんやね!」
「はよ来たかったから急いで来てん!」
両手でガッツポーズを作りながら跳びはねる金ちゃんを見て、やっぱり可愛いなあ、と思った。
「金ちゃん!やっと追いついたわ。今日は皆で善哉食べに行こうやーって言ってたんに、着替えるなりいきなり走りだしてどないしたん。」
いつもの作るね、と言って作り始めようとしたら、扉が開いて、ミルクティー色の髪の人が入ってきた。
「あっ、白石ー!ここはワイの秘密の店やったんにー!」
むうっ、とむくれる金ちゃんもなんだか可愛い。
「なんや、タコ焼き食べたかったんか。どうも、金ちゃんがいつもお世話になってるみたいで。同い年くらい、やんな?バイトしとるん?」
「中3。ここ実家やから、バイトやなくて家の手伝いみたいなもんなんよ。」
ああ、そうなんや、と頷くミルクティー君に金ちゃんが突進した。
「白石ー!」
「なんや金ちゃん、別にタコ焼きとったりなんてせえへんで。」
そんな金ちゃんに、今作るからちょっと待っとってな、と声をかけると、ちゃうわー!と金ちゃんが大きな声を出した。
「ワイは伊織に会いたくて来てんねん!白石ー、もう伊織と話したらアカン!」
「へっ。」
キョトンとしている私を放って、白石君はニコニコしながら、そうやったんかー、ほな邪魔して悪かったなー、と言って去って行った。
「伊織ー、タコ焼きまだかー?」
「あっ、うん、今作るね!」
いつもの金ちゃんに戻って安心した。
なんだかさっきいきなりあんなこと言うからはちょっとドキッとしちゃった。
「金ちゃんはほんまよく食べるなー。」
「おう、いっぱい食べてはよ大きくなりたいんや!伊織、付き合うなら自分より背が高い人がええって言っとったもんな!伊織より大きくなったら伊織に好きって言うんやー!」
「なっ!」
「あっ、伊織、今タコ3個入ったで!うっかりさんやな〜。」
私、背が高い人がいいなんて言ったっけ、と記憶を辿りつつ、金ちゃんそれもう好きって言ってるよ!と思った。
でも、やっぱりそんなところも可愛いな、なんて思いながら、タコ焼きを作った。
実は毎日金ちゃんが来るのを楽しみにしてるって言ったら、どんな顔してくれるかな。
笑ってくれたら嬉しいな。
(「なあ、伊織!付き合うんなら、背ぇ高い方がええん?」)
(「ん〜、せやね。(アカン間違えてタコ3個入れてもた。)」)
(「さよか!(絶対背ぇ伸ばしたる!)」)
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