一氏君にぶつかる
今日の占いは最高だった。
得に恋愛運!
と友達に言うと、初恋もまだのくせに〜、と言われた。
いや、初恋ならもう終わってるよ!・・・まあ、幼稚園の時のを含めてもいいのなら、だけどね!
でも夢見たっていいじゃないか。
例えば、曲がり角でぶつかるとか、ぶつかった拍子によろけて支えてもらうとか、そんなとこから始まるロマンスを!
「わっ!」
「おっ。」
危なかった。校内とは言え曲がり角では気をつけなきゃ。
・・・あれ?
「うわ、失敗した。もう一回!リテイクプリーズ!」
「あ?なんがや。」
「曲がり角でぶつかったら、よろけたところを支えてもらおう、あわよくばそこからロマンスを!って思ってたのに、つい普通によけちゃったんだよ!」
曲がり角でぶつかること自体希少なのに!とぶつかった人につめよると、その人はいぶかしげな表情から一変、吹き出した。
「ぶっ、ははっ、なんやお前おもろいな。」
今度ぶつかったら支えたるわ、と言いながら私の頭を軽く叩いて、ほなな、神崎と言ってその人は去って行こうとした。
「え、名前、なんで知ってるの?」
「なんでやろな。お前はもっと周りよぉ見い。」
その人は顔だけちょっと振り返って、ニヤッとしてからまた歩きだした。
「小春ちゃん!でね、そのニヤッ、がめっちゃかっこよかったの。誰だろうね、あの人!」
さっそく恋愛アドバイザー(勝手に呼んでるだけだけど)の小春ちゃんのところに行くと、小春ちゃんが、誰やろねー、どんな子やったん、と聞いてきたのでその人の特徴を話すと、小春ちゃんはキョトンとしてから小さくプッと吹き出した。
「え、何何?小春ちゃん知ってるの?」
「いや、まあ・・・、ふふふ。」
小春ちゃんは何か知ってそうだったけど、笑ってるだけで何も言ってくれなかった。
でも同じ学校なんだし、また会えるよね。
次にぶつかったら支えてくれるって言ってたし、見つけたら全力でぶつかろう!
(「なあ、小春、いつも小春んとこに来とるあいつ、なんて名前なんや?」)
(「なんや、ユウ君が気にするなんて珍しいわね〜。」)
(「はっ、べ、別に気にしてへんし!」)
(「もう、ユウ君たら素直やないんやから。神崎伊織ちゃんよ。」)
(「神崎、伊織、か。」)
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