白石君と謙也君と暇つぶし
急に自習になった授業中、なんか暇だなーっと隣を見ると真剣に消しゴムを机に並べる謙也君が目に入った。
「謙也君、なんかおもろいこと言うて。」
「ぶはっ、お前いきなし無茶ブリやな!」
いつも通りオーバーなリアクションをする謙也君に、だって暇やねんもん、と言うと、はあ、とため息をつかれた。
「暇って、…今授業中やん。」
「自分かて自習せずに消しゴムを並べとったやん。」
消しゴムは文房具やからええねん、なんて言っている謙也をスルーして先に進めた。
「ねえ、ピザって10回言って。」
「ん?ピザ、ピザ、…ピザ!」
「ほな、ここは?」
私が肘を指さしながら聞くと、謙也は、ふっ、と笑った。
「なめてもろたら困るで伊織、ピザって言うと思ってんねやろ?ひざや!」
勝ち誇ったように言う謙也に、なんだか軽く目眩がした。
ひざやなくてひじやで、ひじ。手の関節がひざやったら、足の関節何になんねん。
せやけど謙也君の新しすぎる答に脱力して、つっこめんかった。
「…アカン、天才的やな、謙也君。斜め上を行く回答や。」
「せやろ、せやろ。」
「おん、天才的(なアホ)や。」
もう謙也君にこういうひっかけゲームをするのやめよう、と思っていると、前の席の白石君がくるっと椅子ごと振り返った。
「何しとるん自分ら。」
楽しそうやなー、まぜてやーと笑う白石君に、謙也君が、俺の天才ぶりが発揮できるゲームやで、なんて言うものだから、白石君は不思議そうに首をかしげて私を見た。
「10回ゲームしててん。白石君もする?」
「おん、なんか出してー。」
「なんにしよ、…ほな、デスティニーって10回言って。」
「デスティニー、デスティニー、…デスティニー!」
「東京にある有名テーマパークは?」
頼むで白石君。デスティニーランドとか言わんとってな。今それやっても二番煎じやで、おもんないで、と心の中で念じていると、白石君が爽やかに微笑んで口を開いた。
「としまえん!」
「…は?」
ポカンとしていると、白石君は、ん?よみうりランドの方がよかったん?と不思議そうに言った。
「はははっ、なんやねん白石、としまえんって!ここはデスティニーランドやろ!」
「は?そんなんないやろ。あったとしても、としまえんのが絶対有名や。」
「いやいや、有名やて、デスティニーランド!」
言い合いを始めてしまった二人を見て、なんだか呆れを通りこして笑いがこみあげてきた。
「ぷっ、く、あはは!」
「あー、ほら、白石がマイナーなん出すから伊織笑けてもたやん。」
「マイナーちゃうって。謙也がデスティニーランドなんてようわからんやつ出すから笑ってんねんて、きっと。」
ほんまはデスティニーっていう響きにつられてネズミが出迎えてくれる某夢の国の名前を答えて「ブー、それがあるのは千葉ですー」っていうひっかけやってんけど、なんやねん、この人ら。新しすぎてツッコミついていけへんわ。
まあ、せやけど、楽しかったから、なんでもええかー。同じく楽しそうに笑う二人を見て、そう思った。
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